12月のJLPTまでの読解対策:本を読む時間をどう使うか

2026年の日本語能力試験(JLPT)の第2回は、12月6日(日)です(JLPT 公式サイトによる)。この記事を公開した10月24日から数えると、残りは6週間ほどです。海外では7月か12月のどちらかしか試験をしない都市もあるので、受験地の日程は公式サイトで確かめてください。
この記事は、本来は日本語を学んでいる方に向けて英語と中国語で書いたものを、日本語でも読めるようにしたものです。日本語を教えている方の参考にもなればと思います。
私は日本語の多読を勧める記事をいくつか書いてきました。ただ、試験が近づくと、本を読んでいてよいのか、問題集だけに切り替えるべきか、迷う方も多いと思います。この記事では、まず公式資料で読解の問題の形を確かめ、そのうえで残りの6週間をどう使うかを考えます。
読解の問題の形
JLPT の公式サイトの試験科目と試験時間のページには、レベルごとの読解の問題の種類が載っています。まとめると次のとおりです。
| 問題の種類 | 出るレベル |
|---|---|
| 内容理解(短文) | N1からN5まで |
| 内容理解(中文) | N1からN5まで |
| 内容理解(長文) | N1、N3 |
| 統合理解 | N1、N2 |
| 主張理解(長文) | N1、N2 |
| 情報検索 | N1からN5まで |
統合理解は、複数の文章を読み比べる問題です。情報検索は、案内やお知らせのような資料から必要な情報を探す問題です。どの問題の形がどんなものかは、公式サイトの問題例で、レベルごとに一問ずつ見られます。
試験時間も確かめておきます。読解は単独の科目ではなく、ほかの問題と同じ時間の中にあります。
| レベル | 読解を含む科目 | 時間 |
|---|---|---|
| N1 | 言語知識(文字・語彙・文法)・読解 | 110分 |
| N2 | 言語知識(文字・語彙・文法)・読解 | 105分 |
| N3 | 言語知識(文法)・読解 | 70分 |
| N4 | 言語知識(文法)・読解 | 55分 |
| N5 | 言語知識(文法)・読解 | 40分 |
N1 と N2 では、語彙や文法の問題と読解を、同じ時間の中で解きます。語彙の問題で迷っているうちに、読解の時間がなくなることがあり得ます。読解の対策は、内容が分かることと同じくらい、決まった時間の中で読み終えることでもあると私は考えています。
本を読むことが読解に効くと考える理由
私が本を読むことを勧める理由は、主に二つあります。
一つめは、読む速さです。問題集の文章は短く、一題ごとに止まって答えを確かめます。本は止まらずに読み続けるので、知らない語があっても前後から意味を取って先に進む力がつきます。試験の長い文章で必要なのは、この力だと思います。
二つめは、読み続ける体力です。N1 の110分は、集中して日本語を読むには長い時間です。1日に数千字の文章を読むことに慣れていれば、試験の後半でも読む力が落ちにくくなります。
一方で、本を読むだけでは足りないところもあります。情報検索の問題は、表や案内の中から条件に合うものを探す問題で、小説を読むのとは違う読み方です。統合理解や主張理解も、筆者の言いたいことを選択肢と照らし合わせる練習が要ります。こうした問題の形には、問題集で慣れるのがいちばん早いと思います。公式サイトでは『日本語能力試験公式問題集』も紹介されています。
6週間の配分
私が勧めたい配分は、前半と後半で比重を入れ替えるやり方です。
最初の3週間は、読む時間の中心を本に置きます。そのうえで、最初の週のうちに、公式問題集などで本番と同じ時間の模擬試験を一回解いておきます。どの問題の形で時間がかかるのか、どこで点を落とすのかが分かれば、残りの時間の使い方が決まります。
後半の3週間は、問題を解く時間を増やします。それでも本は毎日少し読み続けるのがよいと考えています。1日の読む量をゼロにしてしまうと、せっかく身についた読む速さが落ちるからです。量は短くてかまいません。
試験の前の週は、新しい長編には手をつけないほうがよいと思います。読み終わらないまま試験の日を迎えると、気持ちのうえで落ち着きません。
直前に読むなら、短い作品
試験の前に読むなら、一度で読み切れる長さの作品が向いています。私は、2,000字から6,000字くらいの作品を勧めます。試験の長文問題の文章よりは長いですが、一晩で終わる長さです。
N3 のあたりなら、新美南吉の「手袋を買いに」や宮沢賢治の「注文の多い料理店」のような童話が候補です。N2 なら芥川龍之介の「蜘蛛の糸」、N1 なら「羅生門」くらいの短編がよいと思います。それぞれの文字数と漢字の割合はJLPTレベル別に読める近代文学の目安に、ほかの短い作品は日本語学習者向け 青空文庫のやさしい名作30選にまとめました。
N1 を受ける方には、夏目漱石の「夢十夜」も勧めたい作品です。全体で約16,000字ありますが、十の夢に分かれていて、一夜分はおよそ1,400字から1,800字です。試験の前の10日間、一晩に一夜ずつ読む、という使い方ができます。漱石の作品の選び方は夏目漱石を学習者が読むに書きました。
ここで大事なのは、近代文学の語彙は試験の語彙と同じではない、ということです。辞書を引いても試験に出ない語がたくさん出てきます。直前に読む本は、知らない語を覚えるためではなく、日本語を読む調子を保つためのものだと考えるのがよいと思います。
試験のあとも
12月の試験が終わっても、読むことは続けてほしいと思います。試験のために始めた読書が、試験のあとの楽しみになれば、それがいちばんよい結果だと私は考えています。
Niho で読む時間を作る
私は、青空文庫の17,000以上の作品の目録が入った iPhone・iPad 用の無料の読書アプリ Niho を作っています。
作品の詳細画面には文字数が出るので、一晩で読める長さかどうかをダウンロードの前に確かめられます。読んでいる途中で語を選んで「辞書で引く」を押すと、意味と一緒に JLPT のレベルが表示されます。このレベルは Jonathan Waller さんの JLPT 単語リストによるもので、公式の出題基準ではありません。
引いた語は、出会った文と一緒に単語帳に保存されます。単語帳には N5 から N1 までの単語リストも入っています。クイズには、本の中の実際の文で空欄を埋める「穴埋め」や、漢字の語の読みをかなで入力する「読み」があり、試験の前に自分が引いた語を見直すのに使えます。
ダウンロードした本は通信なしで読めます。最初の一冊までの手順はNiho の始め方で説明しています。
