小学生の計算が遅いときの練習:速さより先に見ること

小学校の学習指導要領では、計算について「確実にできること」という言葉がくり返し使われています。1年生は「1位数と1位数との加法及びその逆の減法の計算が確実にできること」、2年生は「乗法九九について知り,1位数と1位数との乗法の計算が確実にできること」です(文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」)。算数の内容の中で、計算を「速く」できることを求める書き方は見当たりません。
それでも、宿題の計算プリントに30分かかっているこどもを見ると、心配になるのは自然なことだと思います。この記事では、計算が遅いときに、速さより先に見ておきたいことをまとめました。
「遅い」の中身は1つではない
計算が遅い、とひとことで言っても、時間がかかっている場所はこどもによって違います。私は、だいたい次のどれか、あるいはいくつかの組み合わせだと考えています。
1. 数えて答えを出している。 8+5 を、8から「9、10、11、12、13」と1つずつ数えている。小さい数どうしは速いのに、答えが10をこえると急に遅くなるなら、このパターンが疑われます。
2. 九九や10の組があやふや。 7の段や8の段だけ時間がかかる、ひき算の繰り下がりのところで止まる。全部が遅いのではなく、特定の所で止まっているなら、こちらです。
3. 手順の途中で迷っている。 筆算で、繰り上がりの小さな1をどこに書くか、どの位から計算するかで手が止まる。1つ1つの計算は速いのに、問題全体に時間がかかります。
4. 書くのに時間がかかっている。 答えは頭の中にあるのに、数字をていねいに書くのに時間がかかる。口で言ってもらうと速い場合は、計算ではなく書く時間の問題です。
5. 問題を写すのに時間がかかっている。 プリントやドリルの問題をノートに写す宿題では、写す時間が計算の時間より長いこともあります。
6. 途中で集中が切れる。 1問ずつは速いのに、合計の時間が長い。問題と問題の間に、別のことを考えている時間が入っています。
速さより先に見ること
正しく答えられているか
最初に見たいのは、時間ではなく正しさです。速くても間違いが多いなら、まず正しく答えられるようにするのが先です。遅いけれど全部正しいなら、その子はもう計算のやり方は分かっています。あとは時間の問題で、これは練習で縮みます。
速さを先に求めると、こどもは当てずっぽうで答えを書くようになることがあります。正しさが先、速さはあと。この順番は崩さないほうがよいと私は考えています。
どこで止まっているか
次に、上の1から6のどれなのかを見ます。いちばん分かりやすいのは、こどもの横で1問か2問、声に出しながら解いてもらうことです。
- 指が動いている、口の中で数えている → 1
- 特定の段や、特定の数の組み合わせで止まる → 2
- 筆算の途中で、手が止まって紙を見つめている → 3
- 口では答えが言えるのに、書くのが遅い → 4
このとき、大人は口をはさまずに見るだけにします。途中で教えてしまうと、どこで止まるのかが分からなくなります。
原因ごとの練習
数えている場合は、10の組(1と9、2と8、3と7、4と6、5と5)に戻ります。「8はあといくつで10?」に数えずに答えられるようになると、繰り上がりのたし算は目に見えて速くなります。やり方は繰り上がり・繰り下がりの教え方に書きました。
九九があやふやな場合は、止まる段だけを取り出して練習します。全部の段をやり直す必要はありません。唱えられるのに使うと遅い場合は、段の順ではなく、ばらばらの順で答える練習が効くと思います。九九の覚え方:唱える・書く・使うの順番にまとめています。
手順で迷う場合は、速さは置いておいて、1問を最後まで同じ手順で解くことをくり返します。手順が体に入ると、迷う時間がなくなります。
書くのが遅い場合は、計算の練習と書く練習を分けて考えます。計算の練習では答えを口で言ってもらってもかまいません。数字の形がくずれて自分で読み返している場合は、ゆっくりでも読める字で書くほうが、結局は速くなると思います。
写すのが遅い場合は、それが計算の遅さとは別のことだと、こども自身に伝えてあげるとよいと思います。「計算は遅くないよ。写すのに時間がかかっているね」と分けて言うだけで、気持ちが楽になることがあります。
集中が切れる場合は、量を減らします。20問を1回より、5問を4回のほうが、合計の時間は短くなることもあります。
「速くしなさい」と言わずに進める
速さを上げたいときも、「速く」とは言わないほうがよいと私は思います。急かされると、こどもは考えるのをやめて、思いついた数字を書くようになります。
代わりに、こういう進め方があります。
- 時間を測るなら、比べる相手は前回の自分だけにする。 きょうだいや友だちと比べると、計算ではなく勝ち負けの話になります。
- 短いセットで測る。 10問くらいなら、集中が切れる前に終わります。
- 「速くなった」ではなく「迷わなくなった」を見る。 7×8 で止まらなくなった、8+5 を数えなくなった。速さはその結果としてついてきます。
なお、学年が上がっても1けたのたし算を指で数え続けている、数の大小を比べるのにとても時間がかかる、という様子が長く続く場合は、家の練習だけで抱えこまず、担任の先生に相談してみるのがよいと思います。
マスカル算数でできること
マスカル算数は、答えを画面に手書きして解く計算ドリルのアプリで、私が作っています。
「1ケタ計算ドリル」では、たし算・ひき算・かけ算・わり算をそれぞれオンオフでき、問題数は10問から300問まで10段階で選べます。結果は「スコア」として1問あたりの秒数(「秒/問」)で記録され、自己ベストを更新すると「新記録」と出ます。ドリルのメニュー画面の「スコア推移」のグラフでは、「週」「月」「年」「最新10件」で変化を見られます。比べる相手が前回の自分になる作りです。答えは手書きなので、この秒数には書く時間も入っています。
数えて答えている段階なら、「数字の上にドット表示」をオンにすると、数の分だけドットが出ます。「くり上がり・くり下がりなし」をオンにすれば、答えが10をこえない問題だけで練習できます。筆算の手順を練習したいときは「筆算ドリル」があり、1マスに1文字ずつ手書きで答えます。
ホームの「今日のチャレンジ」には、10問を20秒以内に解く「スピードチャレンジ」と、何問続けて正解できるかを見る「集中チャレンジ」が日替わりで出ます。スピードチャレンジは、正しく答えられるようになってから使うのがよいと思います。
ホームの「今日のドリル」「今日のチャレンジ」「今日のレッスン」は毎日無料です。ドリルやレッスンを一覧から選んで使うには、買いきりのアンロック(1,500円)が必要です。広告はありません。毎日の使い方はマスカル算数の活用アイデアに書きました。
計算が遅いとき、こどもの中では、何かがどこかで止まっています。その場所を見つけるのが先で、速さはその後でよいと思います。
