ステイルメイトとは:詰みとの違いと終盤で気をつけること

チェスで、相手のキングを追い詰めたのに、対局が引き分けで終わることがあります。駒の数では大きく勝っていて、あと数手でメイトのはずだった。それが「ステイルメイト」です。初心者のうちに一度は経験する失敗だと思います。
この記事では、ステイルメイトの定義、チェックメイトとの違い、勝てる終盤でステイルメイトにしてしまう典型の形、そしてそれを避けるための確かめ方を書きます。ルールの確認には、国際チェス連盟(FIDE)の競技規則を使いました。
ステイルメイトの定義
FIDE の競技規則では、手番の側に指せる手がひとつもなく、しかもキングがチェックされていない場合、その局面はステイルメイトで、対局は引き分けになると定められています。ステイルメイトが生じた時点で、対局は終わります。
ポイントは二つです。ひとつは「指せる手がひとつもない」こと。キングだけでなく、ポーンやほかの駒も含めて、ルール上動かせる手がないという意味です。もうひとつは「チェックされていない」ことです。
チェスでは、手番を飛ばすこと(パス)はできません。指せる手があれば、たとえ不利になる手でも必ず指さなければなりません。ステイルメイトは、その「必ず指す」という決まりと、「キングを取られるマスには動けない」という決まりがぶつかったときに起きる局面だと言えます。
チェックメイトとの違い
チェックメイトとステイルメイトは、どちらも「手番の側に指せる手がない」局面です。違いはチェックの有無だけです。
- チェックメイト: チェックされていて、それを逃れる手がない。チェックした側の勝ち。
- ステイルメイト: チェックされていないが、指せる手がない。引き分け。
例で比べます。私が置いた、駒の少ない局面です。
局面A: 黒のキングが a8 だけ。白のクイーンが b6、白のキングは e1。黒の手番。
黒のキングが動けるマスは a7、b7、b8 の三つですが、どれも b6 のクイーンが利いています。一方で、a8 そのものにはクイーンが利いていません。指せる手がなく、チェックもされていないので、ステイルメイトで引き分けです。
局面B: 黒のキングが a8 だけ。白のクイーンが b7、白のキングが b6。
今度はクイーンが a8 にチェックをかけています。黒のキングはクイーンを取りたいところですが、b7 には白のキングが利いているので取れません。a7 と b8 にもクイーンが利いています。チェックを逃れる手がないので、チェックメイトです。
二つの局面の差は、クイーンの位置が1マス違うことと、白のキングが近くにいるかどうかだけです。勝ちと引き分けは、それくらい近いところにあります。
クイーンで追い詰めるときの典型の形
ステイルメイトが最も起こりやすいのは、クイーンとキングで、相手のキング1枚を追い詰める終盤だと思います。クイーンは利きが広いので、相手のキングの逃げ場を減らしているうちに、うっかり最後の1マスまで消してしまうのです。
局面Aがその典型です。キングが盤の隅にいて、クイーンがそこからナイトの跳ぶ位置(a8 に対する b6 や c7)にあると、キングは動けなくなります。隅のキングに対して、クイーンをナイトの位置に置いたら要注意、と覚えておくと防ぎやすくなります。
避け方は、クイーンだけで仕上げようとしないことです。クイーンで相手のキングを端に押し込んだら、そこで追うのをやめて、自分のキングを近づけます。相手のキングには、端の上で行き来できるマスを1つか2つ残しておきます。自分のキングが十分に近づいてから、最後のチェックをかけます。局面Bは、その手順をたどった結果です。
ポーンの終盤とプロモーション
キングとポーン1つ対キングの終盤でも、ステイルメイトはよく起きます。
局面C: 白のキングが c6、白のポーンが c7。黒のキングが c8。黒の手番。
黒のキングが動けそうなマスは b7、d7、b8、d8 です。b7 と d7 には白のキングが、b8 と d8 には c7 のポーンが利いています。ポーンの前の c8 にいる黒のキングはチェックされていません。これもステイルメイトです。白がキングを c6 に寄せた手が、勝ちを逃した手になります。
ポーンがプロモーションする場面では、クイーンに成ると相手が動けなくなり、ルークに成れば勝てる、ということもあります。有名な「サアベドラの局面」では、クイーンに成るとステイルメイトになる仕掛けがあって、ルークに成るのが正解です(英語版 Wikipedia の Saavedra position)。プロモーションは、いつもクイーンが正解とは限りません。
もうひとつ、相手にポーンが残っているときも注意がいります。キングが動けなくても、ポーンが動ければステイルメイトにはなりません。逆に、ポーンが自分の駒に前をふさがれて動けない場合は、キングの逃げ場がなくなった時点でステイルメイトになります。相手のポーンが本当に動けるかどうかを、一度確かめる習慣があるとよいと思います。
指す前の確かめ方
相手の駒が少なくなった終盤では、自分の手を指す前に、次の二つを確かめることを勧めます。
- この手のあと、相手のキングが動けるマスはいくつ残るか。 0になるなら、チェックがかかっているかを確かめます。チェックでなければステイルメイトです。
- キング以外に、相手に動ける駒はあるか。 ポーンが前に進めるか、ほかの駒に指せる手があるかを見ます。
勝っている側にとって、ステイルメイトは「相手に何もさせなかった」結果として起きます。メイトするまでは、相手のキングに動けるマスを残しておく。私は、終盤の技術のかなりの部分がこの一点に集まっていると考えています。
劣勢の側から見たステイルメイト
逆に、負けそうな側にとって、ステイルメイトは引き分けに持ち込むための大事な手段です。トーナメントでは一般に勝ちが1点、引き分けが0.5点なので、負けを引き分けにできれば半分の点が取れます。
劣勢の側がよく考えるのは、自分の駒を全部なくしてキングだけにし、そのキングが動けない形を作ることです。残った駒を相手に取らせることで、指せる手をなくしてしまうわけです。勝っている側からすると、ただで駒を取れる手が罠になっていることがあります。駒を取る前にも、上の二つの確かめが役に立ちます。
将棋にはステイルメイトがない
将棋には、ステイルメイトにあたる引き分けの決まりがありません。将棋では取った駒を持ち駒として打てるので、指す手がまったくない局面は、実戦ではまず起きません。日本将棋連盟の対局規則で勝負がつかない扱いになるのは千日手と持将棋で、どちらも原則として指し直しになります。
詰将棋では、攻め方は毎回王手をかけるので、そもそも「チェックされていないのに動けない」局面が生まれません。将棋から入った人がチェスのメイト問題を解くと、静かな手(チェックでない手)が正解になることに驚くと思いますが、その静かな手こそが、ステイルメイトの危険がある手でもあります。
メイト問題でステイルメイトに慣れる
Chess365 は、2手・3手・4手・5手メイトを各1000問収録した詰チェスのアプリです。いつも白番で、ルール上指せる手ならどれでも指せます。ステイルメイトにする手も指せますが、その手順は失敗になり、「ステイルメイト」「黒は動ける手がないのにチェックされていません。これは引き分けです。最初からやり直しましょう。」と表示されます。リトライの回数を1回使う、通常の失敗と同じ扱いです。遊び方の画面でも、ステイルメイトは勝ちではなく引き分けだと図つきで説明しています。
チェックでない手が正解になる問題が多いので、相手のキングに逃げ場を残しながら追い詰める感覚を、毎日少しずつ確かめられると思います。メイト問題の始め方は 詰チェスの始め方 に、駒の損得の考え方は チェスの駒の価値と交換の考え方 に、アプリの使い方は Chess365 の始め方 に書きました。
