小学生向けの論理パズルの選び方

小学校の算数の目標には、「日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する力」を養うことが書かれています(文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」)。「筋道を立てて考える」練習として、論理パズルを探している方も多いと思います。
ただ、本屋さんのパズルの棚にも、アプリのストアにも、「思考力」と書かれたものがたくさん並んでいます。この記事では、小学生に論理パズルを選ぶときに見るとよい点を、私が大事だと思う順に並べました。
論理パズルとは何か
ここでは、決められたルールの中で、理由をたどれば答えが決まるパズルを論理パズルと呼びます。ナンプレ(数独)、迷路、ハノイの塔、「この中にうそつきが1人いる」のような推理問題がその例です。
知識を問うクイズとは別のものです。漢字や地名を知らなくても解けて、必要なのはルールと、目の前の盤面だけ。ここが論理パズルのよい所だと思います。
選ぶときに見る点
1. ルールを、こどもが自分の言葉で言えるか
いちばん先に見るのはここです。ルールが長いパズルは、考える前に覚えることで疲れてしまいます。ナンプレのルールは「行にも列にもブロックにも、1から9を1回ずつ」で終わります。
お店で手に取ったら、ルールの説明をこどもに読んでもらい、「どうなったらクリア?」と聞いてみるのがよいと思います。答えられれば、そのパズルは入口を通れています。
2. 答えが、当てずっぽうではなく理由で決まるか
よくできた論理パズルは、答えが1つに決まり、そこへ理由をもってたどり着けるように作られています。逆に、何度も試せばいつか当たるパズルは、考えるより手を動かすほうが速くなります。
見分け方として、解き終わったあとに「なぜそこなの?」と聞いてみることをおすすめします。理由が言えるなら、そのパズルは考える練習になっています。言えなくても解けてしまうなら、試行錯誤のパズルに近いと思います。それが悪いわけではありませんが、目的は少し違います。
3. やさしい問題がたくさんあり、段差が小さいか
1冊の最初の数問がもう難しい、というパズル本はよくあります。こどもにとっては、最初の1問で解ける体験をすることがとても大事だと私は考えています。
やさしい問題が多めに入っていて、少しずつ新しい考え方が足されていくもの。目次や問題の並びを見て、難易度の表示が細かく分かれているものを選ぶと失敗が少ないと思います。
4. 間違いに自分で気づけるか
答え合わせがいつも大人まかせだと、こどもは大人が来るまで待つことになります。ルールそのものが答え合わせになっているパズル(ナンプレなら、同じ行に同じ数字が2つあれば間違い)は、自分で気づいて自分で直せます。
5. 1問が短い時間で終わるか
小学生なら、1問が数分から15分くらいで終わるものが続けやすいと思います。長い問題は途中で集中が切れ、終わらないまま次の日になると、どこまで考えたかを忘れてしまいます。
6. 計算や読む力に寄りすぎていないか
数字を使うパズルでも、ナンプレのように計算をしないものと、計算そのものが中心のものがあります。後者は計算の練習としては役に立ちますが、計算が苦手なこどもには、考える前に計算でつまずくことになります。どちらに寄っているかは、選ぶ前に知っておくとよいと思います。
紙、物のパズル、アプリ
紙のパズルは、書きこみが残るのがよい所です。どこで考えが止まったのか、あとから大人が一緒に見られます。消しゴムで消す手間がある分、書く前に考える習慣もつきやすいと思います。
手で動かすパズルは、ハノイの塔のように、動かした結果がそのまま目に見えます。ハノイの塔は、大きさの違う円盤を、小さい円盤の上に大きい円盤を置かないように別の柱へ移すパズルで、円盤が n 枚なら最少の手数は 2 の n 乗から 1 をひいた数になります(Wikipedia「ハノイの塔」)。3枚なら7手です。「最少で何手か」を考え始めると、遊びが少しずつ論理の問題に変わっていきます。
アプリは、問題の量が多く、答え合わせがすぐに返ってくるのがよい所です。一方で、やり直しが簡単すぎると、考えずに試すほうが速くなりがちです。広告の出方や、遊ぶ時間の決め方も、紙にはない検討事項です。
私は、どれか1つに決める必要はないと考えています。紙で理由を書く練習をして、アプリで量をこなす、という組み合わせもあり得ると思います。
難しすぎたときは
選んだパズルが難しすぎることは、よくあります。そのときにしたいことを書いておきます。
- 1段やさしい問題に戻る。 同じ本やアプリの、前のほうの問題で十分です。戻ることは負けではありません。
- 答えではなく、見る場所を教える。 「ここに入る数字は?」ではなく、「この行をもう一度見てみて」くらいにとどめます。
- 声に出して考えてもらう。 大人は聞くだけにします。説明しているうちに、自分で間違いに気づくことがよくあります。
- 次の日にもう一度。 一晩おくと、昨日は見えなかった筋道が見えることがあります。
避けたいのは、大人が代わりに解いてしまうことです。答えが分かっても、その問題はもう考える練習には使えなくなります。
Math Gates について
Math Gates は、私が作っている回路パズルのゲームです。盤の空きマスに、数を変える「門」と、進む向きを90度曲げる「鏡」を置き、「うごかす」を押すと、数を持った「ビット」がまっすぐ走ります。目的地の「ポート」は、条件を満たす値しか受け取りません。
上の選び方に照らすと、こういうパズルです。操作は、マスを押す、選ぶ、走らせる、の3つだけです。駒を置くと、走らせた結果がすぐ点線で盤に描かれるので、動かす前に予想と照らし合わせられます。失敗すると、壁にぶつかった、門を通れない値だった、ポートの条件に合わなかった、のように理由が分かる形で止まります。時間制限もライフもありません。星は使った門の数で決まり、最少の門で解くと星3つです。
7つのワールドは、たし算・ひき算から始まり、かけ算とわり算、余り、負の数、分数、二乗と平方根、真偽と論理へと進みます。各ワールド20問のうち12問をクリアすると、次のワールドが開きます。
6番目の「計算や読む力に寄りすぎていないか」で言えば、Math Gates は計算を使うほうのパズルです。対象は8歳からです。計算そのものにまだ不安がある場合は、ナンプレのような計算を使わないパズルから始めるのもよいと思います。ナンプレのルールはナンプレのルール:はじめての人が知っておくことにまとめました。
iPhone と iPad で遊べます。無料で、クリアの合間に広告が入ります。広告は買い切りの課金で消せます。「ヒント」は、広告を見ると正解の駒を1つ置いてくれる仕組みで、置いた駒は動かせません。
パズルで育つものと育たないものについてはプログラミング的思考とは:パズルで育つものに、Math Gates がどんな人に向くかはMath Gates は、どんな人のためのアプリ?に書きました。
よい論理パズルは、ルールが短く、答えに理由があり、最初の1問が解けるものだと思います。その3つがそろっていれば、あとはこどもの好みで選んで大丈夫です。
