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マスカル算数開発者インタビュー:手で書いて鍛える計算力

Hiroki ObaraHiroki Obara · DeveloperMathCalインタビュー
マスカル算数開発者インタビュー:手で書いて鍛える計算力

マスカル算数は、画面に答えを手書きして解く、小学生向けの算数アプリです。バージョン 1.0.0 は2025年7月に App Store で公開されました。iPhone と iPad で使え、アプリは16言語に対応しています。

2026年2月に筆算ドリル、4月にビーズを使ったモンテッソーリレッスン、5月に「今日のドリル」が入りました。7月の 1.5.0 では名前から「StudyX」を外し、ドリルは22種類、レッスンは59種類になっています。作った hiroki に、はじまりから今の考えまでを聞きました。答えは本人の言葉をほぼそのまま載せています。

最初から手書きのドリル

Q. マスカル算数を作り始めたとき、最初に頭にあったのはどんな画面でしたか。

最初から、手書きで答える計算ドリルというコンセプトで作り始めました。手書きではない計算ドリルアプリはたくさんありますが、手書きで答えるものはほとんどありません。手書きをしないと脳がちゃんと働かない、という BrainDojo を作ったときに知った科学的な事実から作ったものです。

Q. 最初に作ろうとしていたものと、今のアプリはどれくらい違いますか。

最初はシンプルな計算ドリルでした。それが徐々に、小学校の学習カリキュラムのすべてに対応するようになってきました。レッスンを入れたり、継続的に進化させています。完全にこのアプリだけで小学校の算数のカリキュラムを満たせるように、まだまだ進化していきます。

Q. 「マスカル」という名前はどこから来たのですか。

Math & Calculation から来ています。海外では MathCal、日本ではマスカル算数と名前を分けているのは、覚えやすさからです。

退屈だった算数を遊びに

Q. あなた自身は、算数や計算についてどんな子どもでしたか。

私個人としては、算数も計算も得意でした。得意ではありましたが、学校の授業や紙のドリルには退屈していました。だから、テレビゲームのようにインタラクティブな遊びになるといいなと思って作りました。

Q. 子ども向けの教育アプリを作るとき、誰の目線に立って作っていますか。

こどもです。ユーザーはこどもなので、こども第一で作っています。

手を動かすと脳が働く

Q. 答えを数字ボタンではなく手書きにしたのはなぜですか。

手を動かすことで脳が働くからです。画面をポチポチしていても、脳はあまり働きません。

Q. 筆算ドリルでは、すべてのマスの数字が読み取れるまで「答え合わせ」が押せず、読み取った数字をマスの端に小さく表示しています。この形にたどり着くまでに、どんな試行錯誤がありましたか。

実際に、自分の娘が使っているところを観察して、問題があるところは修正しています。

Q. 割り算の筆算ドリルでは、判定するのは商と余りのマスだけで、途中の計算はマス目に自由に書けます。途中式を採点しないのはなぜですか。

快適さが失われるからです。

Q. 筆算ドリルは横画面に対応していません。縦向きに限定したのはなぜですか。

縦に書いていくものだから、縦長じゃないといけません。

Q. 設定には「「5」を2画で認識」「左利き用の回答画面」「わり算記号」があります。どんなきっかけで入れたのですか。

実際に使うところを観察して入れました。

Q. 学年は、誕生日の年と月から日本の学年の区切りで決めています。日本以外の国の子どもには、学年の区切りが合わないこともあります。

基本は日本のカリキュラムに合わせています。ただ、多言語化したり、可能な限りローカライズしたりして、世界中で使えるようにしています。

Q. 「今日のドリル」は、同じ日なら何度開いても同じものが出ます。毎回ランダムにせず、その日の1つにしたのはなぜですか。

1日1回練習すれば十分だからです。

理解と鍛錬を両輪で

Q. 計算機がどこにでもある時代に、子どもが手で速く計算できることには、どんな意味があると考えていますか。

読み書き計算の能力は基本のリテラシーで、脳のいろいろな能力のベースになります。だから、計算機が使えるとしても、計算能力は鍛えるべきだと思います。思考能力を支えるものだからです。

Q. 速さを競うドリルと、ビーズを動かしてしくみを理解するレッスンは、方向が逆のようにも見えます。この二つを同じアプリに入れたのはなぜですか。

理解と鍛錬を両輪で回していくといいと思っています。

Q. モンテッソーリ教育のどこに惹かれたのですか。本物の教具を画面に移すとき、失われるものと、画面だからできることはありますか。

こども中心なところです。手を使って考えるところもユニークです。こどもが手を使って遊びながら、直感的に理解を深めるという考え方があり、その考えを実践できるようにこのアプリをデザインしました。

デジタルのアプリなので、手触りや3Dの質感は再現しきれていません。そこはやはり本物である必要性を感じるところです。問題をインタラクティブに出題して回答するところは、アプリならではだと思います。上手く併用して使ってもらえればいいと思います。

広告を出さない

Q. こどもがひとりで使うアプリで、絶対にやらないと決めていることは何ですか。

広告を出さないことです。親としても、こどもひとりで安心して使わせられることを大事にしています。

Q. 保護者向けの確認には「今の西暦(4けた)を入力」を使っていて、計算問題は使っていません。計算アプリなのに、計算問題にしなかったのはなぜですか。

こどもの計算能力が高いと、保護者向けの確認の意味がなくなるからです。

娘が筆算に興味を持った

Q. 2025年10月の更新のあと、2026年2月に筆算ドリルが入るまで、しばらく間があります。なぜ2月に筆算から再開したのですか。

自分の娘が筆算に興味を持ち始めたからです。

Q. 筆算ドリルで一番苦労したのはどこでしたか。

紙に筆算を手書きするときの感じを、手書き認識で再現するのが難しかったです。直感的にどこに何を書けばいいのか分かるように、インターフェイスをデザインするところがいちばん大変でした。

使っている人から

Q. 印象に残っている使われ方や反応はありますか。

手書き認識の精度について、ネガティブなフィードバックが来ることが多いです。手書きの文字は人それぞれなので、完璧にはできません。しかも、高速で認識しなければいけない。技術的には、まだまだ改善する余地があると感じています。

Q. アプリは16言語に対応していますが、評価は日本に一番多く集まっています。海外と日本の子どもで、違いを感じることはありますか。

欧米圏では計算練習をあまりしない、というのが発見でした。だから、ユーザーの大半はアジア圏です。日本はアジアの国のひとつだなと感じました。

Q. 今日の3つを無料にして、残りを1,500円の買いきりにしています。買いきりを選んだ理由と、値段の考え方を聞かせてください。

アジア圏で使われているので、買いきりのほうがいいかなと思いました。価格については、丸付けも要らないし、演習量も桁違いだし、データも残っていきます。紙の問題集や参考書と比べると、お得かなと思います。

中学、高校の数学へ

Q. これから、増やすことと深くすることのどちらに向かいたいですか。

日本の小学校の算数のカリキュラムは、完全に網羅したいです。現状は、保護者などがレクチャーしながら使うものになっています。それはそれでコミュニケーションツール的でいいと思いますが、中身はまだ改善の余地があると思います。質も量も充実させていきたいです。その次は、中学数学、高校数学と網羅する範囲を広げていく計画です。

計算は道でもある

Q. マスカル算数を使った子どもが大人になったとき、何が残っていてほしいですか。

鍛えられた計算能力です。読み書き計算は知的活動の基礎なので、認知能力として計算能力は重要です。AI がどれだけ進歩しても重要だと思います。逆に、これからどんどん人間が知的ではなくなっていき、知的ではないただの生命体になるのだとしたら、悲しいと思います。

SNS やチャットツール、ショート動画などが隆盛を迎えていて、そういうものに没頭するこども時代はもったいないし、あまり健全ではないと感じます。依存や中毒を生み出す現代社会で育つこどもたちの将来が本当に心配になりますが、しがないアプリ開発者として、これからも「こどもたちが賢くなるための何か」をささやかに作っていきたいと思います。

Q. このアプリを作ってきて、算数や学ぶことについて考えが変わった点はありますか。まだ答えが出ていない問いがあれば聞かせてください。

ドリルのような busy work は、モンテッソーリ教育的には推奨されません。ただ、日本を含むアジア圏の「計算に対する愛」は、欧米には理解できないと感じています。計算を高速で行うのは、マインドスポーツのような遊びとも言えるし、武道的な、極める道とも言えます。自発的に取り組むのであれば、脳にも良い習慣だと思います。計算が遅いよりも速いほうが仕事で役立つこともあるだろうし、すべてをコンピュータに任せるのは危ういと思います。

デジタルより紙のほうが頭に残りやすい、という話がありますが、それはそうかもしれないと感じます。やっぱり紙の質感はいいです。メモを取るときも、iPad のツルツルの画面に書くより、紙に書きたくなります。紙とデジタルは、いいとこ取りで上手く併用したらいいのかなと感じています。

マスカル算数について

マスカル算数には、1桁の計算から筆算、分数、小数、割合・速さまでの計算ドリルが22種類と、ビーズを動かして四則演算や分数、図形を学ぶモンテッソーリレッスンが59種類入っています。答えはすべて手書きです。ホームの「今日のドリル」「今日のチャレンジ」「今日のレッスン」は毎日無料で、一覧から好きなドリルやレッスンを選ぶには1,500円の買いきりのアンロックが必要です。広告はありません。

使い方はマスカル算数の始め方に、筆算の教え方は筆算のやり方を家で教えるに書いています。アプリの詳細はマスカル算数のページをご覧ください。

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