計算の順番で答えが変わる:遊びで教える関数の合成と逆算

4という数を用意します。2をたしてから3倍すると18。先に3倍してから2をたすと14。同じ数に、同じ2つの操作をしているのに、答えが違います。
多くのこどもは、この考え方に「かけ算はたし算より先に計算する」という式の読み方の決まりとしてだけ出会います。けれども、その下にある考え方は、決まりよりずっと大きくて面白いものだと私は思っています。操作を順につなげることは関数の合成で、その順番が結果を変える。Math Gates を設計したとき、名前を教わる前にまず手で感じてほしいと思ったのが、このことでした。この記事では、私が何度も立ち返った小さな例をまとめました。食卓やホワイトボードで試してみたい保護者や先生の方に向けて書いています。
2つの順番、2つの答え
冒頭の組み合わせを、ほかの数でも試してみます。
| はじめの数 | +2 → ×3 | ×3 → +2 |
|---|---|---|
| 4 | 6、そして18 | 12、そして14 |
| 5 | 7、そして21 | 15、そして17 |
| 10 | 12、そして36 | 30、そして32 |
答えはいつも4ちがいです。ここは少し立ち止まる価値があります。これに気づいたこどもは、「どうしていつも4なの?」という、数学者と同じ問いをすでに立てているからです。
理由は、最初の順番では+2が×3を通り抜けて+6になるからです。式で書くと、(x+2)×3 は 3x+6、x×3+2 は 3x+2。何から始めても、差は6ひく2です。8歳のこどもに文字式を見せる必要はありません。「2はどうなったのかな」と聞いて、たどらせてみるだけで十分です。
順番が関係ないとき
順番が関係ない場合を見ることも、同じくらい大切です。+3してから+5しても、+5してから+3しても同じ。×2してから×3しても、×3してから×2しても同じです。たし算どうしは入れ替えられる。かけ算どうしも入れ替えられる。崩れるのは、2つの種類がまざったときです。
私は、2つの操作の組を「入れ替えても同じ」と「入れ替えると変わる」に、こども自身に仕分けてもらうのが好きです。たし算で習ったことから、たいていは全部入れ替えられると思っていて、最初の反例に驚きます。その驚きこそが学びです。
いわゆる「計算の順序」とは少し違う話
学校で「計算の順序」というと、ふつうは式の読み方の決まりを指します。4+2×3 は、かけ算を先にするので18ではなく10です。これは表記の約束で、人が書いた式をどう読むかを決めています。
合成のほうは、実際に一歩ずつ何をするかの話です。それを書き表すのがかっこです。(4+2)×3 は18、4×3+2 は14。2つの順番が本当に別の機械なのだと一度感じたこどもは、かっこをずっと素直に受け入れると私は考えています。かっこは意味のない決まりではなく、どちらの機械のことを言っているのかを伝える唯一の方法になるからです。
機械を巻き戻す
合成が面白くなるのは、戻るときです。4を3倍して12、2をたして14。では、14から4へはどうやって戻るのでしょう。
それぞれの操作を逆の操作で打ち消します。順番も逆です。まず2をひいて12。次に3でわって4。逆の順番でやろうとすると崩れます。14を3でわっても、整数になりません。
服を着るのと同じです。靴下をはいてから靴をはくので、脱ぐときは靴が先です。こどもはこれをもう知っています。まだ数と結びついていないだけです。
逆算
同じ考え方は、問題を解く道具にもなります。3から始めて20にしたい。使えるのは+2と×4です。
両方の順番を試してもいいのですが、20から始めて「最後の一歩は何だったか」と考えることもできます。最後が×4なら、その前は5です。5は3+2。これで決まりです。+2、それから×4。最後が+2なら、その前は18ですが、18は3×4ではありません。この順番は違います。
2段階なら、当てずっぽうでもほぼ同じ速さです。4段、5段と増え、選択肢も多くなると、逆算のほうがずっと速くなります。一歩戻るたびに、試さなければならなかった候補が消えていくからです。「何を入れたらこうなったか」が仕事の大半を占める文字式や方程式に、こどもが持っていける習慣のなかでも、特に役に立つもののひとつだと思います。
決して変わらないもの
計算しなくても頼りにできる性質を持つ操作があります。2倍すれば、必ず偶数になる。2をたしても、奇数か偶数かは変わらない。
7から始めて、偶数にしたいとします。2を何回たしても、9、11、13。いつまでもたどり着きません。1回2倍すれば14です。問われていたのは「何回か」ではなく、「どの種類の操作か」でした。
数学ではこういう性質を不変量と呼びます。こどもがその言葉を知る必要はありません。必要なのは、もう一回+2を試すかわりに手を止めて、そのやり方ではうまくいかないと気づく経験です。
アプリなしで試すなら
鉛筆と紙があれば十分です。
- 箱を2つ描きます。 横に並べて、「+2」「×3」と書きます。こどもに数を選んでもらい、何が出てくるか予想してから計算します。箱を入れ替えて、もう一度予想します。
- 計算の前に、予想を聞きます。 理解を育てるのは予想のほうで、計算はその確かめにすぎません。
- 「わたしの機械は何でしょう」遊び。 大人がきまりを隠し、こどもが数を入れ、大人が結果を返します。こどもは箱の中身を当てます。
- 逆向きに動かします。 「14が出てきたよ。何を入れたでしょう」。
- 見つけたことを、自分の言葉で言ってもらいます。 「たし算とかけ算がまざると、順番で変わる」と言えたら、もう分かっています。
数は小さくしておきます。大事なのは構造です。一歩ごとの計算に苦労すると、構造が計算の陰に隠れてしまいます。
Math Gates について
Math Gates は、こうした考え方をもとに私が作ったパズルゲームです。数を持ったビットが盤の上をまっすぐ進みます。数を変える門と、経路を90度曲げる鏡を置くと、最後のポートは決まった値しか受け取りません。ビットはまっすぐしか進まないので、どの門を先に通るかは、置いた場所で決まります。倍にする前に足したいなら、鏡で経路を曲げて、たし算の門に先に当たるようにするしかありません。合成が、目に見える配置の問題になります。
ゲームは、上に書いたような考え方を先に説明しません。駒を置くとすぐに通り道が描かれるので、当てずっぽうではなく、読んでから「うごかす」を押す遊びになります。クリアすると、いま自分がしたことに名前をつけたカードが出て、その背後にある式が示されます。「かけ算とたし算は順番で結果が変わる」や「+2 は偶数か奇数かを変えない」のようなカードです。手持ちの門はいつも必要な数より1個多く、最少の門で解くと星3つなので、もっと短い機械を探す理由がいつも残ります。たし算から論理まで、7ワールド140問。対象は8歳からです。クリアの合間に広告が入る無料のゲームで、買い切りの課金で広告を消せます。
計算そのものにまだ時間がかかるなら、それは別に練習しておく価値があります。12+2に注意を全部使ってしまうと、構造を見る余裕が残らないからです。その練習には、手書きで答える計算ドリルのアプリ StudyX MathCal があります。
操作の順番は、こどもがひとりで見つけられる、最初の本当に数学らしい考え方のひとつだと私は考えています。始めるのに必要なのは、鉛筆と、箱が2つと、4という数だけです。
