ふりがなを外していくタイミング

2010年11月30日に内閣告示された「常用漢字表」には2,136字が載っていて、「一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」とされています。大人向けの本は、この範囲の漢字にはふつう読みを振りません。ふりがなは、こども向けの本か、難しい字や特別な読みの字に付くものです。
つまり、日本語の本を読み続けていけば、いつかはふりがなのない文章に出会います。この記事では、ふりがなをいつ、どう外していくかを考えます。
この記事は、本来は日本語を学んでいる方に向けて英語と中国語で書いたものを、日本語でも読めるようにしたものです。日本語を教えている方の参考にもなればと思います。
ふりがなに頼るのは悪いことか
最初に私の考えを書いておきます。ふりがなに頼ること自体は、悪いことではないと思います。
日本のこども向けの本は、ほとんどの漢字にふりがなを振っています。こどもは、ふりがなを頼りに読みながら、漢字と読みの組み合わせを少しずつ覚えていきます。学習者が同じ道を通るのは自然なことです。読めない字で止まって話が分からなくなるより、ふりがなを使って一冊読み切るほうが、得るものは多いと私は考えています。
ただ、ふりがながあると、目は仮名のほうに行きやすくなります。漢字の形を見ずに仮名だけを読んで先へ進むと、本を何冊読んでも、ふりがなのない文章では読めない語が残ります。気をつけたいのは、頼ることではなく、ずっと同じ頼り方を続けることです。
外してよいかを確かめる
外す目安として、私は試験のレベルや読んだ冊数より、実際に一度外してみることを勧めます。やり方は簡単です。
一度読んだ章を、ふりがなを消してもう一度読みます。初めて読む章ではなく、内容をもう知っている章を使うのがこつです。話の筋で迷うことがないので、読めない語の数だけを数えられます。
数えてみて、読めない語が1ページに1つか2つで、それも人名や地名、珍しい字ばかりなら、その種類の本ではふりがなはもう要らないと思います。読めない語が次々に出てきて、文の意味まで追えなくなるなら、まだ早いということです。その場合も、どの語で止まったかが分かれば、それが次に覚える語になります。
一度に全部より、作品ごとに
外し方は、一度に全部ではなく、少しずつを勧めます。ただし、私の言う「少しずつ」は、語ごとに選んで外すことではありません。読む作品と、読む回数で分けることです。
**読み返すときに外す。**一度目はふりがなを付けて読み、二度目は外して読みます。一度目で意味が分かっているので、二度目は漢字の形と読みを結びつけることに集中できます。短い作品なら、二度読むのはそれほど負担になりません。
**やさしい作品から外す。**同じ人でも、作品によって外せるかどうかは変わります。何冊か読んで慣れた作家の作品や、筋を知っている話から外していくのがよいと思います。新しい作家や、古い言い方の多い作品に移るときは、またふりがなを付けて構いません。
**ふりがなの少ない版に移る。**青空文庫のふりがなは、もとにした本(底本)に振られていたものです。こども向けの底本はほとんどの漢字に振ってあり、大人向けの底本は難しい字にだけ振ってあります。大人向けの版を読むことは、それだけで、ふりがなを半分外したのに近い練習になります。
戻ることを恥ずかしく思う必要はありません。外してみて読めなかった章は、付け直して読めばよいのです。
外したあと、読みを確かめる
ふりがなを外して読むとき、いちばん困るのは、読みの分からない字をそのままにしてしまうことです。読めない字を自分で適当に読んで進むと、間違った読みが残ります。読みが分からない字は、その場で確かめるのがよいと思います。
紙の本なら、漢字辞典で部首や画数から引くことになります。手間はかかりますが、そのぶん記憶に残ります。電子書籍や読書アプリなら、語を選んで辞書を出すのがいちばん早い方法です。
一つ注意があります。ふりがなが特別な読みを指定している語は、辞書を引くと別の読みが出てくることがあります。夏目漱石の作品には、「判然」に「はっきり」と振ってある箇所があります。辞書では「はんぜん」です。ふりがなを外して読んでいて、辞書の読みでは文がしっくりこないときは、ふりがなを付け直して、底本がどう読ませているかを確かめてください。漱石の書き方については夏目漱石を学習者が読むに書きました。
Niho でふりがなを外す
私は、青空文庫の17,000以上の作品の目録が入った iPhone・iPad 用の無料の読書アプリ Niho を作っています。
Niho のふりがなは、底本にルビがある箇所だけに表示します。アプリが読みを自動で付けることはしていません。読書画面の「Aa」ボタンを押すと出る「表示設定」に「ふりがなを表示」のスイッチがあり、ここでオンとオフを切り替えます。設定画面にも同じスイッチがあります。この設定はすべての本に共通で、「ページ」「スクロール」「チャット」の3つの表示モードのどれにも効きます。語ごとに外すことはできないので、上に書いたように、作品や読む回数で切り替える使い方になります。
ふりがなを消して読んでいるときに読めない字があったら、その語を長押しで選び、「辞書で引く」を押します。辞書の画面には、見出しの語と一緒に読みが仮名で出ます。スピーカーのボタンを押すと、端末の日本語音声でその語を読み上げます。底本の読みを確かめたいときは、「Aa」からふりがなを一時的にオンにすれば、その場で表示されます。
引いた語は、出会った文と一緒に単語帳に保存されます。クイズの「読み」の形式では、漢字の語の読みを仮名で入力します。ふりがなを外して読めなかった語を、ここで練習しておくと、次に同じ語に出会ったときに止まらずに済みます。
縦書きには対応しておらず、横書きのみです。毎日の使い方のヒントはNiho で日本語の本を読むための、毎日のヒントに、最初の一冊までの手順はNiho の始め方に書きました。
