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分数のわり算はなぜひっくり返すのか

OBARA HirokiOBARA Hiroki · DeveloperMath Gates使い方
分数のわり算はなぜひっくり返すのか

分数のわり算は、小学6年生の算数で習います。学習指導要領(平成29年告示)では、第6学年で分数のかけ算とわり算を扱うことになっています(文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」)。

教科書に出てくる計算のしかたは、「わる数の分母と分子を入れかえて、かけ算にする」です。2/3 ÷ 1/4 なら、1/4 をひっくり返して 4/1 にし、2/3 × 4 = 8/3 とします。

計算そのものは簡単です。困るのは、こどもに「なんでひっくり返すの」と聞かれたときです。手順は覚えていても、理由まで習った記憶がある大人は多くないと思います。この記事では、その理由を3つの見方で説明します。どれか1つが腑に落ちれば十分です。

例には、自分で決めた 2/3 ÷ 1/4 を使います。答えは 8/3、帯分数で書くと 2と2/3 です。

逆数とは

先に言葉をひとつそろえておきます。

かけ算をして答えが1になる2つの数を、たがいに「逆数」といいます。3/4 の逆数は 4/3 です。3/4 × 4/3 = 1 になるからです。整数の 5 は 5/1 と考えられるので、逆数は 1/5 です。

分数の逆数は、分母と分子を入れかえるだけで作れます。「ひっくり返す」は、逆数にすることのくだけた言い方です。ひとつだけ例外があって、0 には逆数がありません。0 に何をかけても1にはならないからです。0 でわれないことと、根は同じです。

見方1:いくつ分あるかを数える

わり算には「いくつ分あるか」を求める意味があります。6 ÷ 2 は、6 の中に 2 がいくつ入っているか、です。

同じように考えると、2/3 ÷ 1/4 は「2/3 の中に 1/4 がいくつ入っているか」になります。

このままでは比べにくいので、分母をそろえます。2/3 は 8/12、1/4 は 3/12 です。

2/3 = 8/12  ■■■■■■■■□□□□
1/4 = 3/12  ■■■□□□□□□□□□

1/12 を1つのかけらと見ると、8かけらの中に3かけらがいくつ入るか、という問題になります。つまり 8 ÷ 3 です。答えは 8/3。2回入って、3かけらのうち2かけら分が残るので、2と2/3 回分です。

ひっくり返してかけた答えと同じになりました。この見方のよい所は、ひっくり返す話がまったく出てこないことです。分母をそろえれば、分数のわり算は整数のわり算に戻ります。

ただ、毎回分母をそろえるのは手間がかかります。それを近道にしたものが、ひっくり返してかける方法だと考えることができます。

見方2:わる数を1にしてしまう

わり算には、わられる数とわる数に同じ数をかけても答えは変わらない、というきまりがあります。12 ÷ 4 = 3 で、両方を10倍した 120 ÷ 40 も 3 です。

このきまりを使って、わる数を1にしてしまいます。わる数 1/4 を1にするには、4 をかければよい。4 は 1/4 の逆数です。わられる数にも同じ 4 をかけます。

2/3 ÷ 1/4
= (2/3 × 4) ÷ (1/4 × 4)
= (2/3 × 4) ÷ 1
= 2/3 × 4

1 でわっても数は変わらないので、残るのは 2/3 × 4 だけです。わる数の逆数をかける形が、ここで自然に出てきます。

わる数が 3/5 なら、3/5 を1にする数は 5/3 です。だから両方に 5/3 をかけて、わられる数 × 5/3 が残ります。わる数がどんな分数でも、その逆数をかければ1になる。これが「ひっくり返してかける」のいちばん短い説明だと私は思います。

見方3:1あたりの量を求める

教科書でよく使われるのは、量の問題で考える方法です。

「1/4 L のペンキで、2/3 m² の板がぬれます。1 L では何 m² ぬれますか」

1 L は 1/4 L の4倍なので、ぬれる広さも4倍です。2/3 × 4 = 8/3 m²。式に書けば 2/3 ÷ 1/4 なので、ここでも ÷ 1/4 が × 4 になっています。

わる数の分子が1でないときに、この見方が役に立ちます。「2/5 L で 3/4 m² ぬれるとき、1 L では」を考えます。

  1. まず 1/5 L あたりを出します。2/5 L の半分なので、広さも半分にして 3/4 ÷ 2
  2. 1 L は 1/5 L の5倍なので、それを5倍して 3/4 ÷ 2 × 5

「2でわって、5をかける」は、「5/2 をかける」と同じです。わる数 2/5 の分子の 2 でわり、分母の 5 をかける。分母と分子が入れかわって見えるのは、このためです。面積図を描くと、この2つの段階がそのまま図になります。

「かけ算の逆」としてたしかめる

もうひとつ、答えのたしかめ方も知っておくと安心です。わり算はかけ算の逆なので、2/3 ÷ 1/4 = □ は、□ × 1/4 = 2/3 となる □ を探すことと同じです。

□ に 8/3 を入れると、8/3 × 1/4 = 8/12 = 2/3 になります。合っています。1/4 をかけると小さくなるので、元に戻すには4倍する必要がある。ここからも、÷ 1/4 と × 4 が同じだと分かります。

理由を知らなくても計算はできるけれど

ひっくり返す理由を知らなくても、分数のわり算の計算問題は解けます。それはその通りです。

それでも理由を一度通っておく価値はあると私は考えています。ひとつは、どちらをひっくり返すのかを間違えなくなることです。わる数を1にする、と覚えていれば、わられる数をひっくり返す間違いは起きません。もうひとつは、文章題で式を立てるときに迷いにくくなることです。「1あたり」や「いくつ分」の意味が分かっていれば、÷ の式が自然に立ちます。

こどもに説明するときは、見方1の分母をそろえる方法から始めるのがよいと思います。整数のわり算と同じ考え方で答えが出るので、新しい決まりを覚える感じがしません。そのあとで、毎回そろえる手間をはぶく近道として、見方2を見せる。この順番だと、ひっくり返す計算が「ずるい手」ではなく「便利な手」に見えてきます。

Math Gates について

Math Gates は、私が作っている回路パズルのゲームです。盤の空きマスに、数を変える「門」と、進む向きを90度曲げる「鏡」を置いて「うごかす」を押すと、数を持った「ビット」がまっすぐ走ります。目的地の「ポート」は、条件を満たす値しか受け取りません。

7つのワールドのうち、5番目の「分ける回路」が分数と逆数を扱うワールドです。ここから先は ÷ の門で割り切れない数も分数として通り、逆数にする「1/v」の門も出てきます。数はすべて分数のまま正確に計算されるので、0.333… のような小数のずれは出ません。門を置くと、ビットがどの値でどこに着くかが点線で盤に描かれます。÷ の門と × の門を通した値を見比べながら、この記事に書いたことを自分の手で確かめられる作りです。クリアすると、いまやったことに名前と数式がついた発見カードが出ます。

設計の方針は「数学は説明しない。試させる」です。答えを先に教えるゲームではないので、理由を言葉で知りたいときはこの記事のような説明と組み合わせて使っていただくのがよいと思います。

7ワールド140問で、対象は8歳からです。iPhone と iPad で遊べます。無料で、クリアの合間に広告が入ります。広告は買い切りの課金で消せます。

操作の順番で答えが変わる話は計算の順番で答えが変わる:遊びで教える関数の合成と逆算に、パズルで育つ考え方についてはプログラミング的思考とは:パズルで育つものに書きました。

分数のわり算でひっくり返すのは、わる数を1にするためです。分母をそろえても、1あたりを考えても、同じ所に行き着きます。どの道から入っても答えが同じになる、というのは算数のおもしろい所だと思います。

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