あいうえおのアプリ開発者インタビュー:娘のためにDIYで作った五十音表

あいうえおのアプリは、2022年9月2日に最初のコミットがあり、9月20日に App Store でバージョン 1.0 が公開されました。SwiftUI で書かれた画面1枚のアプリで、StudyX のアプリの中では古いほうです。2025年7月に音声を入れ替え、2026年3月にローマ字の大文字・小文字モードと「ききとりあそび」が加わりました。
なぜ五十音表だったのか、どんな考えで今の形になったのか。作った hiroki に聞きました。答えは本人の言葉をほぼそのまま載せています。
娘の「文字と音」の時期に
Q. 最初のコミットは2022年9月2日です。なぜ五十音表だったのですか。
自分の娘が当時4歳で、ひらがなやカタカナの文字と音を結びつける時期だったからです。それで DIY 的に作りました。娘はこれを使って、自分の名前などの音を確かめて遊んでいました。
Q. 最初のコミットから公開まで18日ほどです。
SwiftUI でアプリを作るのは慣れていたので、すぐに作ってリリースできました。普段から小さく作って出すことは心がけていますが、このアプリは特にシンプルなので、すぐに形になりました。当時は AI がまったく使えなかったので、コードは全部自力で書いています。
Q. 紙の五十音表もお風呂のポスターも、無料のアプリもたくさんあります。自分で作る意味はどこにあったのですか。
娘が使うために作りました。アプリは音が使えるというのが大きな強みです。無料のアプリは質が低く、こども向けなのに広告が表示されるようなものが多くて、使えるものはありませんでした。今も状況はあまり変わらないと思います。
私が大事にしているのはシンプルさです。こどもが迷わず、安心安全に使えること。そこを最も大事にしています。そういう考えで作られているものはあまり多くないので、使ってくださる方はそこに共感してくれているのだと思います。
作り手として
Q. 今の StudyX のアプリは Flutter が多いですが、このアプリは Swift です。
はじめは Swift で iOS アプリを作る仕事をしていて、途中から Android にも対応できるように Flutter で開発するようになりました。今はネイティブで書くこともあれば、Flutter で作ることもあります。描画のパフォーマンスなどを最適化するにはネイティブで書く必要があるので、アプリによってケースバイケースです。
Q. だれでも知っている五十音表を作るとき、何がいちばん難しかったですか。
自分が求めるような、シンプルで美しく使いやすいものは、こども向けアプリでは希少です。なので、ただ自分が求めるものを形にすることしか考えていませんでした。アプリを作るときにいつも難しいと感じるのは、自分の理想をどうやって技術的に実現するかということで、それ以外はあまり考えていません。
Q. ご自身はひらがなをどうやって覚えましたか。
4歳頃から、目につくものをひたすらノートに書くという遊びにハマっていました。ひらがなだけでなく、漢字や数字など、目につくあらゆるものを真似て書いて覚えた記憶があります。なので、小学校に入ってからの国語の授業は一度通った道で、退屈でしょうがありませんでした。
ただ、正直なところ、このアプリの作り方には特に影響していません。このアプリは完全に、娘のニーズに向けて作ったものだからです。
表の向き、切り替え、書く場所
Q. 表は右端が「あ」行で、左へ「わ」行まで並びます。
日本語は縦書きで書く言語なので、それに合わせました。
Q. 濁音・半濁音・拗音は、ボタンで表ごと切り替わります。一枚の大きな表にしなかったのはなぜですか。
iPad だけでなく iPhone でも使えるようにしたかったからです。画面の大きさの都合で、今のデザインになりました。
Q. 書く場所は iPad にだけあります。
これも画面の大きさの問題で、iPhone では余白が足りなかったからです。
Q. ペンは黒の1種類で、色も太さも変えられず、消すときは全部まとめて消えます。
選択肢が多いと試せることは増えますが、同時に使いやすさが減ると考えています。このアプリのメインは文字と音を結びつけることで、書くことはおまけです。だから複雑にしないようにしました。文字をしっかり書きたい場合は紙などに書けばいい、と割り切ってデザインしています。
ローマ字のこと
Q. ローマ字はヘボン式ですが、「を」だけ wo です。
キーボードで入力するときの書き方に合わせました。
Q. 大文字の「A」と小文字の「a」、2つのモードがあります。
ローマ字には、ひらがなやカタカナとは違って大文字と小文字の区別があります。それを自然に知ってもらう機会になればいいなと思って分けました。
ヘボン式と訓令式の違いや、2025年に告示されたつづり方の見直しについては、ローマ字のヘボン式と訓令式の違いにまとめています。
ききとりあそび
Q. ききとりあそびは、言葉まるごとではなく、1字ずつの音をつなげて流します。音のつぶを一つずつ聞かせるほうがよいと考えたのですか。
そうです。
Q. 間違えると最初の字からやり直しになります。厳しすぎないか、迷いはありませんでしたか。
それは大人の考えです。こどもは、何度も自分で訂正することを楽しいと感じています。モンテッソーリ教育から学んだ考え方です。
Q. 次に押す字が濁音や拗音のとき、表が自動で切り替わります。これはヒントにもなります。どこまで手助けするか、線をどう引いていますか。
こどもが自分で何かを発見できるように体験をデザインしたい、と常に考えています。
Q. 小さい「っ」やのばす「ー」を含む言葉は出題されません。
表で答えられないからです。足りない部分は、保護者の方などがコミュニケーションで補えばいいと思います。アプリにできないことは人間が、人間にできないことはアプリが、お互いに補い合えばいいという考えです。
何もない、ということ
Q. このアプリには点数も、ごほうびも、進み具合の記録もありません。
こどもは試行錯誤そのものに喜びを見出すので、外からの報酬はいらないと考えています。こども向けのアプリで、そこを大事にしているものはほとんどないと思います。私はモンテッソーリ教育の考え方に基づいて、こどもが使うものをデザインしています。
Q. 見る・聞く・書くのうち、いちばん大事なのはどれですか。
どれも同じくらい大事だと思います。どれか一つというより、その間にある関係のほうが本質で、そこが豊かになることが大事です。
Q. 4歳のこどもと、日本語を学ぶ海外の大人。まったく違う人たちに同じ表を渡すことに、無理はありませんか。
ありません。シンプルで美しく使いやすい道具は、本質的に万人向けだと思います。
2年10か月の空白
Q. 2022年9月から2025年7月まで、約2年10か月、このアプリには手が入っていません。
機能的にはもう完成していたので、新しく手を入れるところがありませんでした。下の娘が使うようになって、いろいろ気になるところが出てきたのと、ゲーム的なモードがあると面白いと思ったので、そのアイデアを実装しました。それがききとりあそびです。
Q. 最初の2022年版で、やり直したいと思うところはありますか。
ありません。現実が常にベストです。
使っている人、これから
Q. 日本以外の国からもダウンロードされています。どんな人が使っていると思いますか。
海外に住む日本人の方などが、こどものために使っているのだと思います。
Q. 画面の文字は日本語だけです。翻訳するつもりはありますか。
日本語のままがよいと考えています。
Q. このアプリを、今後どこまで大きくしたいですか。
DIY で作ったものなので、大きくならなくていいです。このようなアプリを求める人たちに使ってもらえれば、それで十分です。
Q. こどもが最初に覚える文字の道具を作ることに、どんな意味を感じていますか。
特に何も考えていません。ただ、使う人が快適に使えるものを作りたいと、常々考えています。それがこどもか大人かは関係ありません。このアプリで字を覚えた人がいたら、お役に立てて光栄だなと思います。
あいうえおのアプリについて
表の字をタップすると音が鳴り、濁音・半濁音・拗音、カタカナ、ローマ字の大文字・小文字に切り替えられます。iPad では表の横に書く場所があり、ききとりあそびでは、流れた言葉の字を順に押していきます。価格は1,500円の買い切りで、広告もアプリ内課金もありません。
使い方はあいうえおのアプリの始め方に、毎日の取り入れ方はあいうえおのアプリ活用アイデアに書いています。アプリの詳細はあいうえおのアプリのページをご覧ください。
