詰将棋で将棋は強くなるのか:効く理由と続け方

将棋を始めて少したつと、たいてい誰かに「詰将棋を解くとよい」と勧められます。ところが、詰将棋は実戦とはルールが少し違います。攻め方は毎回王手をかけなければならず、玉方は盤上と攻め方の持ち駒以外の駒をすべて持っています。実戦でこんな局面はまず出てきません。それでも本当に役に立つのか、と思う方がいるのは自然なことだと思います。
私の考えを先に書くと、詰将棋は終盤の力を伸ばすうえで、とても効率のよい練習です。ただし、それだけで将棋全体が強くなるわけではありません。この記事では、詰将棋が実戦のどこに効くのか、何が身につかないのか、そしてどう続けるとよいかを書きます。詰将棋のルールや解き方の基本は 詰将棋の始め方 に書いたので、ここでは効き目と続け方に絞ります。
古くからある練習法
詰将棋は、最近になって考えられた練習法ではありません。江戸時代には、将棋の家元が詰将棋の作品集を幕府に献上していて、伊藤宗看の『将棋無双』(1734年)や伊藤看寿の『将棋図巧』(1755年)が今も解かれています(Wikipedia「詰将棋」)。
ただ、こうした古典の多くは、長い手数と鮮やかな手順を楽しむ「作品」です。実戦の力をつける目的なら、もっと短く、実戦に出てきそうな形の問題から始めるのが普通です。以下では主に、3手詰や5手詰のような短い詰将棋を念頭に置いて書きます。
効く理由1:詰みの形が見えるようになる
実戦の終盤で、相手の玉が詰んでいるのに気づかず、別の手を指してしまう。初心者のうちによくあることだと思います。理由の多くは、読む力が足りないことよりも、詰みの形を知らないことにあります。
詰将棋を数多く解くと、頭金、腹金、尻金、一間竜といった最後の形を、何度も目にします。形が頭に入っていると、実戦で玉の周りを見たときに「あの形にできないか」と考える手がかりになります。読み始める場所がはっきりするので、時間の少ない終盤でも詰みに気づきやすくなります。
効く理由2:終盤の読みの練習になる
詰将棋は、読みの練習として非常に条件がよいと思います。攻め方の手は王手に限られ、玉方の応手も多くはありません。3手詰なら、自分の王手、相手の応手、自分の詰ます手の3手を、頭の中で正確に並べる練習になります。
実戦の中盤で同じことをしようとすると、候補手が多すぎて、どこまで読めたのかがあいまいになります。詰将棋は候補が絞られているぶん、「読み切った」という感覚を持ちやすく、答え合わせもはっきりできます。この「最後まで正確に読む」経験の積み重ねが、終盤の速さと正確さにつながるのだと私は考えています。
効く理由3:捨て駒の感覚が身につく
詰将棋の正解には、駒をただで渡すように見える捨て駒がよく出てきます。玉を下段に落とす捨て駒、守りの駒をずらす捨て駒、焦点に打つ捨て駒など、決まった型があります(詳しくは 詰将棋の基本手筋 に書きました)。
実戦では、駒を損する手はなかなか指せません。けれど、相手の玉が詰むなら、駒の損得は関係なくなります。将棋の格言に「終盤は駒の損得より速度」とあるように、終盤では、駒を渡してでも早く詰ませるほうが勝ちに近い場面があります。捨て駒を何度も解いておくと、そうした手が候補として自然に浮かぶようになります。
効く理由4:自分の玉の安全が分かる
詰将棋で鍛えられるのは、相手の玉を詰ませる力だけではありません。同じ力で、自分の玉が詰むかどうかも判断できます。
終盤で攻め合いになったとき、自分の玉に詰みがないと分かっていれば、受けを省いて全力で攻められます。逆に、自分の玉に詰みがあると気づけば、その前に手を打てます。攻めるか受けるかの判断の土台には、どちらの玉が詰むかを読む力があり、それはそのまま詰将棋の力だと思います。
詰将棋だけでは身につかないこと
正直に書いておきたいのは、詰将棋が教えてくれないこともたくさんある、という点です。
序盤と中盤。 駒組み、戦法の選び方、駒の損得の判断は、詰将棋では練習できません。終盤までたどり着く前に大きく差をつけられていれば、詰みを読む力を使う機会もありません。
王手でない攻め。 実戦の寄せでは、「詰めろ」(次に詰ませる狙いのある手)や「必至」(どう受けても詰む形)のように、王手でない手で相手を追い詰めることがよくあります。詰将棋は王手だけで詰ませるので、こうした手は別に練習する必要があります。必至問題という練習法もあります。
詰みがあるかどうか分からないこと。 詰将棋には必ず答えがあります。実戦では、そもそも詰みがあるのかどうかが分かりません。読んでも見つからないとき、詰みがないと判断して別の手を選ぶのも、実戦の大事な力です。
受け。 自玉の詰みに気づくことはできても、どう受けるかは別の技術です。
私は、詰将棋は終盤の柱の一本で、残りは実戦と棋譜並べ、必至や次の一手の問題で補うもの、と考えています。
続け方
効果があるとしても、続かなければ意味がありません。続けやすい形として、私は次のような進め方を勧めます。
短い手数を数多く。 最初は3手詰で十分です。難しい問題に長く悩むより、短い問題をたくさん解くほうが、詰みの形に触れる回数が増えます。3手詰がすぐに見えるようになってから、5手詰に進めばよいと思います。
駒を動かす前に、頭の中で読み切る。 盤や画面の上で駒を動かしながら考えると、読みの練習になりにくくなります。正解だと思う手順を最後まで頭の中で並べてから、初めて駒を動かす。この順番を守るだけで、同じ問題から得られるものが変わります。
分からなければ、答えを見てよい。 何十分も一問に悩むより、数分考えて分からなければ答えを見て、手順を理解するほうが効率がよいと私は思います。答えを見た問題は、日を置いてもう一度解きます。
毎日、少しずつ。 1日に何十問も解くより、数問を毎日続けるほうが、形が定着しやすいと考えています。決まった時間に解く習慣にすると、続けやすくなります。
実戦で確かめる。 対局のあとで、終盤に詰みがなかったかを振り返ると、詰将棋で覚えた形が実戦のどこに出てくるのかが分かります。
毎日一問の詰将棋に
Shogi365 は、3手詰・5手詰・7手詰・9手詰を各1000問収録した詰将棋のアプリです。毎日の「今日の一問」があり、直近7日の達成と連続日数がホームに表示されます。王手なら正解でも不正解でも指せて、玉方が最も粘る応手を自動で返すので、頭の中で読んだ手順が合っていたかを盤上で確かめられます。手数以内に詰まなければ失敗で、3回までやり直せます。王手でない手は指せないので、詰将棋の約束どおりに解けます。
問題はすべてアプリ自前のソルバーで生成し、初手が唯一で、攻め方の駒にも玉方の駒にも無駄がないことを確かめています。解いたあとには「感想戦」で一手ずつ振り返れます。上に書いた「頭の中で読み切ってから指す」使い方をすると、短い時間でも読みの練習になると思います。
アプリの使い方は Shogi365 の始め方 に、続けるためのコツは Shogi365 の使い方のヒント に書きました。
