ひらがなとカタカナはどちらを先に教えるか

いまの小学校では、ひらがなを先に、カタカナをあとに教えています。1986年12月16日に政府が衆議院に出した答弁書には、「平仮名は日常生活で最もよく接する文字であり、生活と結び付いた文字教育を行うのが効果的であることから、小学校においては片仮名より先に平仮名が指導されている」と書かれています。
ひらがなが書けるようになってきたこどもに、いつカタカナを教えればよいのか。あるいは、カタカナを先に覚えてしまったけれど大丈夫か。この記事では、どちらを先にするかについて分かっている事実を整理し、そのうえで家での進め方について私の考えを書きます。
学習指導要領は順番を決めていない
小学校学習指導要領(平成29年告示)の国語では、1年生と2年生の内容として「平仮名及び片仮名を読み,書くとともに,片仮名で書く語の種類を知り,文や文章の中で使うこと」と書かれています。ひらがなとカタカナは同じ一文の中に並んでいて、どちらを先にするかまでは決めていません。
ひらがなが先になっているのは、学習指導要領の決まりではなく、上の答弁書にある理由による学校での扱いです。家で教える場合も、決まりとしてこの順番を守らなければならないわけではありません。
戦前はカタカナが先だった
順番は、昔から同じだったわけではありません。上の答弁書は、1986年12月4日に出された質問主意書への答えです。その質問主意書には、「曾ての國語教育にあつては、先に片假名を、後に平假名を教へたが、戦後はこの順序が逆になつた」とあります。
質問した議員は、直線の多いカタカナを先に、曲線の多いひらがなをあとに教えるべきだと主張していました。幼児の書く力から見ればそのほうが実態に合う、という理由です。これに対する政府の答えが、生活の中でいちばん目にするひらがなを先に、というものでした。
つまり、どちらにも筋の通った理由があります。書きやすさを重く見ればカタカナ、生活で使う場面を重く見ればひらがな、ということです。
字の形で比べると
カタカナは直線が多く、ひらがなは曲線が多い。これはよく言われることで、形を見るとそのとおりです。カタカナには、ひらがなの「な」「ぬ」「ね」のような、線の途中で小さく回って結ぶ動きがありません。
ただ、画数で比べると、思ったほど差はありません。このサイトの書き順データで清音46字の画数を足すと、ひらがなは104画、カタカナは108画です。1画で書ける字は、ひらがなが11字あるのに対して、カタカナは「ノ」「フ」「ヘ」「レ」の4字だけです。カタカナは、短い線を2本、3本と組み合わせる字が多いのです。
カタカナには、形の似た字が多いという難しさもあります。「シ」と「ツ」、「ソ」と「ン」は、部品が同じで組み立て方だけが違います。この4字についてはカタカナのシとツ、ソとンの違いに詳しく書きました。
書く手間で比べると、どちらが易しいとは言い切れない、というのが私の見方です。曲線と結びが難しいひらがな、似た字の区別が難しいカタカナ、ということだと思います。
私がひらがなを先に勧める理由
私は、家でもひらがなを先にするのがよいと考えています。理由は二つです。
ひとつは、こどもが読む文の多くがひらがなだからです。絵本も、幼児向けの本も、ほとんどはひらがなで書かれています。読めるようになった字は、書く練習の手がかりになります。読める字が多いひらがなから書き始めるほうが、こどもにとって自然だと思います。
もうひとつは、小学校の授業とずれないことです。入学してからも、ひらがなが先に出てきます。家で先にカタカナを固めても困ることはありませんが、学校と同じ順番にしておくと、こどもが混乱しにくいと考えています。
カタカナを始める目安
私が目安にしているのは、ひらがなの清音がだいたい書けるようになったころです。46字すべてが整っていなくてもかまいません。ひらがなで迷う字が少なくなってきたら、カタカナに進んでよいと思います。
カタカナは、同じ音のひらがなと並べて教えると覚えやすいと考えています。「か」と「カ」、「き」と「キ」、「せ」と「セ」のように、もとの漢字が同じで形の似ている組があるからです。ひらがなの「か」は「加」から、カタカナの「カ」も「加」の一部から生まれました。似ている組を手がかりにすると、カタカナを一から覚えるより楽です。
そのうえで、カタカナを使う言葉と一緒に練習します。学習指導要領にも「片仮名で書く語の種類を知り」とあるように、カタカナは外国から来た言葉や、ものの音を表す言葉などに使います。こどもの好きなお菓子の名前や、乗り物の名前、動物の鳴き声。身の回りのカタカナを探すと、書く理由ができると思います。
先にカタカナに興味を持ったら
こどもによっては、ひらがなより先にカタカナに興味を持つことがあります。好きなキャラクターの名前や、電車の名前がカタカナだった、ということはよくあります。
私は、その場合はカタカナから始めてかまわないと考えています。読むこと、書きたい字を書くことを止める理由はありません。上で見たように、カタカナを先に教えていた時代もありました。ただ、ひらがなを書く練習は別に続けて、絵本の字が読めるようにしておくと安心だと思います。
同時に教えるときの注意
ひらがなとカタカナを同時に教えることもできます。同じ音を二つの形で覚えるので、音と字の結びつきが強くなる、というよい面はあると思います。
気をつけたいのは、形の似た字が混ざることです。「へ」と「ヘ」はほとんど同じ形ですが、「り」と「リ」、「か」と「カ」、「や」と「ヤ」のように、似ていても線の数や曲がり方が違う組があります。ひらがなを書いているときにカタカナの形が出てきたら、それは混ざってきたしるしです。そのときは、片方に絞って練習し直すのがよいと思います。
ひらがなの中で似た字を続けて教えないほうがよい、という考えはひらがなを教える順番の記事に書きました。ひらがなとカタカナの間でも同じだと考えています。
かきカタでひらがなとカタカナを切り替える
かきカタは、ひらがなとカタカナの書き順を練習できる iPhone・iPad 向けのアプリです。字を選ぶと、お手本の線が書き順どおりに一画ずつ伸びていきます。指やペンで1画書いて離すと次の画のお手本が出て、最後まで書くとお手本は消え、自分の字だけが残ります。採点や正誤の判定はありません。
起動すると、ひらがなの清音46字の五十音表が出ます。カタカナを練習するときは、表から同じ音のひらがなを選び、練習画面の上のボタンでカタカナに切り替えます。たとえば「か」を開くと、上に「か が | カ ガ」が並びます。この記事に書いたように、ひらがなとカタカナを同じ音で並べて比べるのに向いた作りです。練習画面の下の < > のボタンは、ひらがなの清音の五十音順に進みます。カタカナを続けて練習したいときは、左上の × で表に戻って次の字を選んでください。
収録しているのは、ひらがなとカタカナの清音・濁音・半濁音の142字です。拗音(きゃ など)や小さい「ッ」「ャ」、長音の「ー」は入っていません。画面にマス目の枠はなく、お手本の字の大きさを大・中・小の3段階で変えられます。十字の補助線を出すこともでき、スピーカーのボタンを押すと、その字の読みが流れます。1,500円の買い切りで、広告やアプリ内課金はありません。iPhone では横向きで使います。
カタカナの全46字の書き順は、このサイトのカタカナの書き順のページでも確かめられます。使い方はかきカタの始め方で、毎日の練習のアイデアはかきカタ活用のヒントでご紹介しています。
