五十音表の覚え方:行と段の並びをつかむ

五十音表は、平安時代から使われてきた表です。現存する最も古い音図として、平安時代中期の『孔雀経音義』(1004年から1027年ごろ)などが挙げられており、母音を5段、子音を10行に並べる形は、サンスクリットの音を研究する悉曇学(しったんがく)の影響を受けたと考えられています(Wikipedia「五十音」)。
つまり五十音表は、最初から「音のしくみ」を整理するために作られた表です。小学校では、1・2年生の国語で平仮名と片仮名を読み、書くことを学びます(小学校学習指導要領(平成29年告示))。表を端から一字ずつ暗記するより、このしくみをつかんだほうが、早く、確かに覚えられると私は考えています。
表のしくみ:行と段
縦書きの五十音表では、右端の列が「あいうえお」で、左へ「か行」「さ行」と続き、左端が「わ行」です。
- 行(ぎょう): 縦の列。同じ子音の字が並びます。「か行」は、かきくけこ。
- 段(だん): 横の並び。同じ母音の字が並びます。「あ段」は、あかさたなはまやらわ。
あいうえおのアプリの開発者インタビューで、アプリの表を右端の「あ」行から左へ並べた理由を聞かれて、私は「日本語は縦書きで書く言語なので、それに合わせました」と答えています。横書きの表では向きが変わり、「あいうえお」が横に並びます。どちらの表でも、行と段の関係は同じです。
この表の要点は、ほとんどの字が「行の子音」と「段の母音」の組み合わせでできていることです。「か」は k の行の a の段、「み」は m の行の i の段。46字を覚えるのではなく、5つの母音と、10の行の並びを覚える、と考えると、ずいぶん軽くなると思います。
覚える順番
私が勧めたい順番は次のとおりです。
1. あ行の5つ。 「あいうえお」は、ほかのすべての行の土台になる母音です。ここだけは、声に出して何度も言えるようにします。
2. 行の頭を並べて言う。 「あ、か、さ、た、な、は、ま、や、ら、わ」。表のどこにどの行があるかの地図になります。これが言えると、知らない字に出会ったときも、表の中で探しやすくなります。
3. 一行ずつ、母音をつけて言う。 か行なら「か、き、く、け、こ」。行の頭が分かっていれば、あとは「あいうえお」の母音を順につけるだけです。一日に一行ずつでも十分だと思います。
4. 規則から外れるところを確かめる。 下にまとめます。
5. 濁音と半濁音。 「゛」をつけると、か行はが行、さ行はざ行、た行はだ行、は行はば行になります。「゜」がつくのは、は行だけで、ぱ行になります。新しい表を覚えるというより、知っている行に印をひとつ足す、と考えると覚えやすいはずです。
字を書く練習は、この順番と分けて考えてよいと思います。読むための並びと、書きやすい順番は違うからです。書く順番についてはひらがなを教える順番:あいうえお順でなく書きやすい字からで詳しく書いています。
規則から外れるところ
五十音表はよくできた表ですが、すべてが規則どおりではありません。ここを先に知っておくと、つまずいたときに「ここは特別」と分かります。
音が少しずれる字。 さ行の「し」、た行の「ち」「つ」、は行の「ふ」は、同じ行のほかの字と子音の音が少し違います。ローマ字のヘボン式で shi、chi、tsu、fu と書くのはこのためです(ローマ字のヘボン式と訓令式の違い)。
空いているマス。 や行は「や、ゆ、よ」の3字、わ行は「わ、を」の2字です。表によっては空欄になっていたり、昔の字が入っていたりします。
「を」と「ん」。 「を」は、今の話し言葉では「お」と同じ音で読みます。「ん」はどの行にも段にも入らず、表の外に置かれます。
見る、聞く、声に出す
表を覚えるとき、目で見るだけ、口で唱えるだけ、のどちらかに偏らないほうがよいと思います。インタビューで、見る・聞く・書くのうち、いちばん大事なのはどれかと聞かれて、私はこう答えました。
どれも同じくらい大事だと思います。どれか一つというより、その間にある関係のほうが本質で、そこが豊かになることが大事です。
表の字を指さしながら声に出す。聞いた音の字を表から探す。見た字を書いてみる。同じ字を別の入り口から何度か通ることで、字と音が結びついていくのだと考えています。
覚えたかどうかを確かめる
確かめ方は、むずかしく考えなくてよいと思います。
- 表の一部を手で隠して、隠れた字を言う。
- 行の頭だけを指して、その行を最後まで言う。
- 大人が言った音の字を、こどもが表から指す。
- 絵本や看板の中で、覚えた行の字を見つける。
最後のものがいちばん大事だと私は考えています。表の中で言えることと、言葉の中で読めることは、少し違うからです。
確かめるときに、点数をつけたり、ごほうびを用意したりする必要はないと思います。インタビューでは、アプリに点数やごほうびを置かない理由を、こう話しています。
こどもは試行錯誤そのものに喜びを見出すので、外からの報酬はいらないと考えています。
毎日どれくらい触れるか
何分がよいという確かな基準は、私には挙げられません。ただ、週末にまとめて長く取り組むより、毎日少しずつ表に触れるほうが続けやすいと思います。こどもが飽きる前にやめて、次の日にまた開く。そのくらいの軽さで十分です。
あいうえおのアプリで覚える
あいうえおのアプリは、タップすると音が鳴る五十音表のアプリです。表は縦書きの五十音表と同じ並びで、右端が「あ」行、左端が「わ」行です。字をタップすると、その音が一字ずつ流れます。
画面下のボタンで、ひらがな、カタカナ、ローマ字の大文字・小文字を切り替えられ、「゛」「゜」「ゃ」のボタンで濁音・半濁音・拗音の表に変わります。上に書いた「知っている行に印をひとつ足す」ことを、表の切り替えで確かめられます。
「ききとりあそび」では、言葉の音が一字ずつ流れ、聞こえた順に表の字を押して答えます。間違えると最初の字からやり直しになります。点数やごほうび、進み具合の記録はありません。iPad では表の下に書く場所があり、指でも Apple Pencil でも書けます。お手本をなぞる機能はなく、表の字を見ながら自由に書く場所です。iPhone には書く場所はありません。
iPhone と iPad で使え、どちらも横向きの画面です。1,500円の買い切りで、広告やアプリ内課金はありません。アプリの画面の文字は日本語です。
最初の使い方はあいうえおのアプリの始め方で、毎日の取り入れ方はあいうえおのアプリ活用アイデアでご紹介しています。
