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絶対音感と相対音感:何歳までに、何が育つのか

Hiroki ObaraHiroki Obara · DeveloperKinder Piano使い方
絶対音感と相対音感:何歳までに、何が育つのか

2012年に新潟大学の宮崎謙一さんらが発表した調査では、日本とポーランドの音楽を学ぶ学生に、その場で単音の名前を当てるテストをしました。95%以上正しく答えられた学生は、日本では30%、ポーランドでは7%でした。絶対音感のある学生は6歳かそれより前に音楽の訓練を始めていて、日本の学生はポーランドの学生より平均で2年以上早く始めていた、と報告されています。

「絶対音感は何歳までに身につくのか」という問いには、こうした研究がよく引かれます。この記事では、絶対音感と相対音感の違い、年齢について研究で分かっていること、そして私が保護者の方に伝えたい注意を書きます。

二つの音感の違い

絶対音感は、ほかの音と比べずに、鳴った音ひとつだけを聞いて「これはラ」と名前を言える力です。

相対音感は、音と音の関係を聞き取る力です。最初の音から次の音がどれだけ上がったか、下がったかが分かります。「ドレミ」を高い声で歌っても低い声で歌っても同じ歌だと分かるのは、相対音感のはたらきです。

音楽をする人の多くは、絶対音感がなくても相対音感で音楽を聞き分けています。歌う、耳で覚えた曲を鍵盤で探す、伴奏に合わせる。こうしたことに必要なのは、ほとんどが音と音の関係です。

年齢について分かっていること

始めた年齢が早いほど、絶対音感のある人は多い

カリフォルニア大学サンディエゴ校の Diana Deutsch さんらは、2006年に北京の中央音楽学院とアメリカのイーストマン音楽学校の1年生を調べました(論文)。どちらの学校でも、音楽の訓練を始めた年齢が早いほど、絶対音感のある学生の割合が高くなっていました。また、始めた年齢が同じでも、声の高さで言葉の意味が変わる中国語(標準語)を話す学生のほうが、割合はずっと高かったと報告されています。

最初に書いた宮崎さんらの調査でも、絶対音感のある学生は6歳までに訓練を始めていました。

幼児が訓練で身につけた報告

榊原彩子さんが2014年に発表した論文では、絶対音感のない2歳から6歳のこども24人が、江口寿子さんの「和音聴音」による方法で訓練を受けました。途中でやめた2人を除く全員が絶対音感を身につけた、と要旨に書かれています。少なくとも6歳より前のこどもは、意図した訓練で絶対音感を身につけられる、というのが著者の結論です。

ただ、要旨を見るかぎり、これは訓練の過程を記録した報告で、訓練をしなかったこどもと比べた実験ではありません。毎日の訓練を続けた家庭の記録だということも、受け取るときに覚えておきたい点です。

大人でも、一部の人は身につけた

香港中文大学の Wong さんらの研究では、大人が12時間から40時間、音の名前を当てる訓練をしました。参加者の多くははっきり上達し、43人中6人は12の音を90%以上の正確さで答えられるようになったと報告されています。「大人になってからは絶対に身につかない」とまでは言えない、ということです。

「何歳まで」と言い切れない理由

ここまでの研究から言えるのは、早く始めた人に絶対音感のある人が多いこと、幼いころの訓練で身につく例があること、大人でも一部の人は上達すること、くらいだと私は考えています。

「何歳を過ぎたら手遅れ」という線を研究がはっきり引いているわけではありません。調べ方によって絶対音感の基準も違います。私は、年齢の数字だけを取り出して急ぐ理由にはしないほうがよいと思います。

絶対音感を目指すときの注意

相対音感の代わりにはならない

宮崎さんの1993年の研究では、音程(二つの音の間の幅)を聞き分ける課題で、絶対音感のある人の一部が、ハ長調では正しく答えられるのに、嬰ヘ長調や少し音程をずらしたホ長調では正確さが下がり、答えるのも遅くなりました。絶対音感のない人は、どの調でも同じように答えられています。宮崎さんは、絶対音感のある人の一部は、相対音感で聞くべきところでも絶対音感に頼ってしまう、と述べています。

絶対音感は便利な力ですが、音楽の聞こえ方のすべてではありません。私は、相対音感は誰にとっても必要で、絶対音感はあれば役に立つことがある力、くらいに考えるのがちょうどよいと思います。

こどもが楽しくなくなったら、本末転倒

単音当ての訓練は、毎日少しずつ続けることが前提になります。こどもが嫌がるのに続けさせると、音を聞くこと自体が嫌いになってしまうかもしれません。こどもが音楽を好きでいることのほうが、私には大事に思えます。

家でできること

特別な訓練をしなくても、家でできることはあります。

  • 歌う。 同じ歌を高い声と低い声で歌ってみると、関係が同じなら同じ歌に聞こえることが分かります。
  • 耳で聞いた音を鍵盤で探す。 大人が鳴らした音を、こどもが鍵盤で探します。違う鍵盤を押したら、高いか低いかを一緒に聞きます。
  • 二つの音を比べる。 二つの音を続けて鳴らし、「上がった」「下がった」「同じ」を答えます。

どれも、正しく当てることより、よく聞くことのほうを大事にすればよいと思います。

聞く練習に

キンダーピアノは、3歳ごろから小学校低学年までのこども向けの、iPhone と iPad で使うピアノアプリです。4歳の娘のために作りました。「おんかん」には9つのレベルがあり、鳴った音と同じ鍵盤を押す「どのおと?」、聞いた2つや3つの音をまねして弾く「まねっこ」、最初のドからつぎの音を探す「ドとくらべっこ」、重なった音を聞き分ける「わおん」と進みます。どれも白い鍵盤の音だけを使います。

「ドとくらべっこ」のように最初の音と比べる課題は、相対音感で聞く練習です。間違えても、「もういちど きく」で何度でも聞き直せます。

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始める時期については ピアノは何歳から始めるか に、練習を嫌がるときのことは こどもがピアノの練習を嫌がるときに に書きました。

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