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こどもがピアノの練習を嫌がるときに

Hiroki ObaraHiroki Obara · DeveloperKinder Piano使い方
こどもがピアノの練習を嫌がるときに

オーストラリアの音楽教育学者 Gary McPherson さんらは、7、8歳で学校の楽器の授業を始めた157人のこどもを、習い始める前から追いかけました。その結果をまとめた章(McPherson、Davidson、Evans「Playing an Instrument」、『The Child as Musician』第2版所収)に、保護者にとって耳の痛い一節があります。習い始めて最初の数か月は、80%を超える母親がこどもに練習を促していました。ところが、その声かけは1年目の終わりごろには減っていきました。楽器に慣れるまでのいちばん難しい時期に、こどもへの支えが減っていたのです。

一部の母親は、こども本人より先に、こどもを音楽に向いていないと見切っていたようだ、とも書かれています。

こどもが練習を嫌がると、保護者のほうも疲れます。この記事では、こどもがピアノの練習を嫌がるとき、保護者が何を見て、どう関わればよいかを、この研究を手がかりに考えます。アプリの使い方の工夫は キンダーピアノを毎日つかうためのヒント に書いたので、ここでは保護者の悩みの側に絞ります。

嫌がるのは、珍しいことではありません

同じ章によると、研究の聞き取りでは、母親が練習のことでこどもと言い争ったり、こどもが「練習が退屈」「どうすればうまくなるか分からない」と話したりする場面がありました。こうした話は、とくに途中でやめたこどもと保護者の聞き取りで目立ったそうです。

ですから、練習を嫌がる日があること自体は、多くの家庭で起きていることだと受け止めてよいと思います。大事なのは、それが続いたときに、理由を見分けることだと私は考えています。

嫌がる理由を見分ける

嫌がる理由は一つではありません。私は、次のように分けて考えると、打つ手が見えやすいと思います。

  • 難しすぎる。 弾けない箇所でいつも止まり、うまくいかない感覚だけが残っている。
  • 何をすればよいか分からない。 「練習しなさい」と言われても、何をどこまでやれば終わりなのかが分からない。
  • 時間が合わない。 疲れている、ほかに遊びたいことがある時間に練習が置かれている。
  • 言われるのが嫌。 練習そのものより、毎回言われることに反発している。
  • ピアノそのものに興味が向いていない。 弾きたい曲がなく、ほかに夢中なことがある。

上の四つは、練習の中身や時間、声のかけ方を変えれば変わる見込みがあります。最後の一つは、少し違う考え方が必要だと思います。

声のかけ方

McPherson さんらは、小学2、3年生くらいまでのこどもは宿題を自分の責任だとはまだ考えておらず、何年も大人の声かけや確認を必要とする、という研究を紹介しています。そのうえで、声かけはこどもが自分で決めている感覚を支える形で行うべきで、支配的で要求ばかりの形になってはいけない、と書いています。

また、宿題についての研究では、手伝うときに大人が前向きでいられると、こどものやる気が育ちやすいとされています。章の著者たちは、これは音楽の練習にもよく当てはまるだろうと述べています。

私は、家でできることとして、次のようなことを考えています。

  • 終わりを決めておく。 「この曲を1回」「ここまで弾けたら終わり」のように、何をすれば終わりかを先に決めます。終わりが見えない練習ほど、こどもにとってつらいものはないと思います。
  • 選べるところを残す。 練習する曲や順番、始める時間のうち、どれかをこどもに選んでもらいます。
  • できたことを言葉にする。 「上手」より「さっきより止まらなくなったね」のように、変わったところを伝えます。
  • 大人が聴き手になる。 練習を見張るのではなく、弾き終わったら聴かせてもらう、という関わり方もあります。

難しすぎるとき

McPherson さんらは、こどもには、自分の力と新しい曲の難しさの釣り合いがとれた目標を立てられるよう手助けが必要だ、と書いています。

いつも同じ箇所で止まるなら、その曲はいまのこどもには少し難しいのかもしれません。片手だけにする、ゆっくり弾く、もっとやさしい曲に戻る。どれも後退ではないと私は思います。弾けた、という感覚が先にあれば、難しい曲にもまた向かえるようになります。

「本人がやると言ったのに」と思ったとき

同じ研究では、途中でやめたこどもは、習い始める前に、自分がどれだけ練習するかを現実より多く見積もっていたことが多かったそうです。始めてから実際の大変さが分かり、仲間より練習が少なくなっていきました。

「自分でやりたいと言ったのだから」と言いたくなる気持ちは分かります。ただ、こどもは始める前には練習の大変さを知りようがありません。最初の約束を持ち出すより、いまの大変さに合わせて、練習の量や中身を一緒に決め直すほうがよいと私は考えています。

やめることも選択肢です

いろいろ試しても、ピアノそのものに興味が向かないこともあります。私は、やめることも一つの選択肢だと思います。

ただ、決める前に、少し時間を置くことをおすすめします。McPherson さんらも、こどもの最初の気持ちは固定されたものではなく、音楽に長く触れたあとで初めて続けたい気持ちが育つこどもも多い、と書いています。教室を休む、練習の量を大きく減らす、弾きたい曲だけを弾く期間をつくる。やめる前に、こうした中間の形を試してもよいと思います。

同じ章は、こどもを励まし支えることは大事だが、無理に習わせることではない、とも書いています。続けるにしてもやめるにしても、こどもが音楽を嫌いにならないことのほうを、私は大切にしたいと考えています。

練習の負担を小さくするために

キンダーピアノは、3歳ごろから小学校低学年までのこども向けの、iPhone と iPad で使うピアノアプリです。4歳の娘のために作りました。練習の画面では、次に弾く音符がハイライトされ、指番号が出て、押す鍵盤が光ります。

難しすぎるときに戻れる道をいくつか用意しています。「メロディ」「ばんそう」「ばんそうつき(りょうて)」から弾くパートを選べて、「ゆっくり」モードは正しい鍵盤を押すまで待ってくれます。曲ごとの★は正確さで決まり、一度取った★は減りません。うまくいかなかった1回で、それまでの記録がなくなることはありません。

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始める時期については ピアノは何歳から始めるか に、聞く力のことは 絶対音感と相対音感 に書きました。

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