「を」と「お」、「は」と「わ」、「へ」と「え」の使い分け

今の仮名遣いのよりどころは、1986年(昭和61年)7月1日に内閣告示第1号として示された「現代仮名遣い」です。2010年に常用漢字表の告示にあわせて一部が改正され、文化庁のサイトで全文が読めます。
この告示は、前書きで、語を「現代語の音韻に従つて書き表すことを原則とし」、一方で「表記の慣習を尊重して,一定の特例を設ける」と書いています。聞こえたとおりに書くのが原則で、例外がいくつかある、ということです。その例外の代表が、助詞の「は」「を」「へ」です。
小学校では、1・2年生の国語で「助詞の『は』,『へ』及び『を』の使い方」を理解して文の中で使うことを学びます(小学校学習指導要領(平成29年告示))。ひらがなを読めるようになったこどもが、文を書き始めたころにつまずくところです。この記事では、告示の本文に沿って三つのきまりを整理し、こどもにどう説明するかを書きます。
三つのきまり
告示の本文は、「第1(原則に基づくきまり)」と「第2(表記の慣習による特例)」に分かれています。助詞のきまりは第2にあります(本文 第2)。
- 助詞の「を」は、「を」と書く。
- 助詞の「は」は、「は」と書く。
- 助詞の「へ」は、「へ」と書く。
どれも、発音は「お」「わ」「え」なのに、書くときは「を」「は」「へ」を使う、というきまりです。助詞でなければ、この特例は使いません。
「を」と「お」
告示の第1には、ふだん使う仮名の一覧があり、そのうち「を」には下線が引かれています。下線の字は「第2に示す場合にだけ用いる」と書かれています。つまり今の仮名遣いでは、「を」は助詞のときにしか使いません。
ですから、言葉の中の「お」の音は、すべて「お」で書きます。「おかし」「かお」「あおい」の「お」がそうです。「を」になるのは助詞だけです。告示の例は「本を読む」「岩をも通す」「やむをえない」などです。
こどもに説明するなら、「『を』は、なにを、の『を』だけ」と私は伝えます。何を食べる、何を見る、の「を」です。言葉の一部ではなく、言葉と言葉をつなぐところにだけ出てくる字だ、ということです。
「は」と「わ」
助詞の「は」も、発音は「わ」です。告示の例には「今日は日曜です」「山では雪が降りました」のほか、「あるいは」「または」「こんにちは」「こんばんは」が入っています。「こんにちは」を「こんにちわ」と書かないのは、このきまりによるものです。
一方、告示は「次のようなものは,この例にあたらない」として、「雨も降るわ風も吹くわ」「来るわ来るわ」「きれいだわ」などを挙げています。文の終わりの「わ」は、「わ」と書きます。
もう一つ、言葉の中の「わ」の音は「わ」です。「わたし」「にわ」「かわ」。「わたしは」と書くとき、前の「わ」は言葉の一部、後ろの「は」は助詞です。こどもには、この一語を並べて見せるのがいちばん分かりやすいと思います。
「へ」と「え」
助詞の「へ」は、行き先を表すときに使い、発音は「え」です。告示の例は「故郷へ帰る」「…さんへ」「母への便り」「駅へは数分」です。手紙の宛名の「おかあさんへ」も、この「へ」です。
言葉の中の「え」の音は「え」で書きます。「えき」「いえ」「まえ」。「えきへ いく」と書けば、一つの文の中に「え」と「へ」が並びます。
こどもへの説明のしかた
私は、きまりを最初から全部説明するより、文の形で見せるほうが伝わると思います。
まず、言葉と助詞を分けて見せる。 「わたし / は」「ほん / を」「がっこう / へ」のように、言葉のあとにくっつく小さな字が助詞だと見せます。小学1年生の教科書の文も、言葉と言葉の間を空けて書かれているものがあります。空いているところのすぐ前に来るのが助詞です。
次に、問いかけで確かめる。 「だれが?」「なにを?」「どこへ?」と聞いて、答えの言葉のあとに付く字がどれかを探します。「なにを」の「を」、「どこへ」の「へ」は、問いかけそのものに助詞が入っているので、覚えやすいはずです。
「は」は、最後に。 「は」の働きは、ほかの二つより説明がむずかしいと思います。「〜は」で話題を出す、という説明はこどもには抽象的です。私は「わたしは」「きょうは」のような決まった形を、たくさん読んで慣れるほうが先でよいと考えています。
間違えたときの直し方
こどもが「わたしわ」と書いたとき、すぐに赤で直すより、本人が見つけられるようにするほうがよいと思います。たとえば、同じ文を大人が正しく書いて横に並べ、「ちがうところはどこかな」と聞きます。
あいうえおのアプリの開発者インタビューで、ききとりあそびで間違えると最初からやり直しになるのは厳しすぎないか、と聞かれて、私はこう答えました。
それは大人の考えです。こどもは、何度も自分で訂正することを楽しいと感じています。
助詞の書き分けも同じだと考えています。何度か自分で直すうちに、文の中での位置で字が決まることに、こども自身が気づいていくはずです。
なお、同じ第2には、「言う」は「ゆう」ではなく「いう」と書く、というきまりもあります。「どういうこと」の「いう」です。助詞と一緒に覚えておくとよいと思います。
あいうえおのアプリで
あいうえおのアプリは、タップすると音が鳴る五十音表のアプリです。表は縦書きの五十音表と同じ並びで、左端の「わ」行には「わ」と「を」が並んでいます。字をタップすると、その音が流れます。
ローマ字のモードでは、「を」を wo と表示しています。インタビューでは、その理由を「キーボードで入力するときの書き方に合わせました」と話しました。助詞の「を」を打つとき、キーボードでは wo と打ちます。同じように、助詞の「は」は ha、「へ」は he と打ちます。発音とは違いますが、書くときの字と同じ打ち方です。ローマ字のつづりの決まりはローマ字のヘボン式と訓令式の違いに、表のしくみは五十音表の覚え方に書いています。
アプリは五十音表の一字ずつの音と形を扱うもので、助詞の使い分けや文の書き方を教える機能はありません。文の練習は、紙や教科書で進めてください。
iPhone と iPad で使え、どちらも横向きの画面です。iPad では表の下に書く場所があり、指や Apple Pencil で自由に書けます。1,500円の買い切りで、広告やアプリ内課金はありません。アプリの画面の文字は日本語です。
最初の使い方はあいうえおのアプリの始め方で、毎日の取り入れ方はあいうえおのアプリ活用アイデアでご紹介しています。
