こどもが自分の名前をひらがなで書けるようになるまで

国立国語研究所は1967年に、幼稚園の4歳児クラスと5歳児クラス、あわせて2,000人あまりのひらがなの読み書きを調べています。報告要旨は、読める字の数に応じて読みの段階を分けていて、その最初のほうの段階を「自分の名前に含まれる文字の読みの学習が始まった」としています。
こどもにとって、自分の名前の字は、五十音表のどの字よりも先に意味をもつ字です。この記事では、入学前に自分の名前をひらがなで書けるようにしたい保護者の方に向けて、名前の字から練習を始める理由と、進め方を書きます。
入学前に書けなければいけないのか
先に、よく聞かれることから書きます。小学校学習指導要領では、ひらがなは1年生の国語で読み書きを学ぶ内容です。入学の時点で書けることは前提になっていません。幼稚園教育要領も、幼児期に求めているのは文字を書けることではなく、文字への興味や関心です。
ですから、入学前に名前が書けなくても心配はいらないと思います。ただ、入学すると、持ち物やプリントに名前を書く場面がすぐにやってきます。自分の名前が書けると、こどもは少し誇らしい気持ちで新しい生活を始められる。私はそれだけでも、名前を練習する意味は十分にあると考えています。
名前の字から始める理由
ひらがなを教える順番には、いくつかの考え方があります。画数の少ない字や、形の簡単な字から始める方法は、ひらがなを教える順番に書きました。
私は、名前の字だけは、その順番の外に置いてよいと思っています。理由は二つあります。一つは、書きたい気持ちがいちばん強い字だからです。もう一つは、毎日目にする字だからです。靴箱、着替えの袋、園の連絡帳。名前の字は、練習した日のあとも、こどもの目に入り続けます。
難しい字があるとき
名前には、こどもにとって難しい字が入っていることがあります。「ゆ」「ぬ」「を」「ね」「む」「あ」「め」のように、線が回ったり、結んだりする字です。
一字だけを先に練習しない。 名前に「ゆ」があると、「ゆ」だけを何度も書かせたくなります。私は、まず名前を全部書いてみて、うまくいかない字だけを少し練習し、また名前に戻る、という順で進めるのがよいと思います。名前の中で書くほうが、書く理由がはっきりしているからです。
大きく書く。 回る線や結びは、小さく書くほど難しくなります。最初は大きなお手本を指でなぞり、それから鉛筆で書くと、手の動きをつかみやすいと思います。なぞり書きの意味についてはなぞり書きの効果に書きました。
左右が逆になってもあわてない。 「し」「く」「つ」などを左右逆に書く鏡文字は、書き始めの時期のこどもによく見られます。私は、その場で強く直すより、お手本と並べて「こっち向きだね」と一度伝えるくらいがよいと考えています。
拗音や「っ」がある名前。 「しょうた」「きょうこ」「りょう」「いっせい」のような名前は、小さい字の書き方も必要です。小さい「ょ」や「っ」は、縦書きならマスの右上に、横書きなら左下に小さく書きます。拗音は小学校1年生で学ぶ内容なので、入学前は「大きい字と小さい字がある」と分かれば十分だと思います。濁点のある名前は、濁点・半濁点の書き方を参考にしてください。
名前を書く機会を活かす
名前を書く機会は、家の中にたくさんあります。
- 持ち物の名前。 入学準備で、持ち物に名前を書く機会が一気に増えます。全部をこどもに書かせる必要はありませんが、ノートの表紙や自分の絵など、一つか二つはこどもに任せてもよいと思います。
- 絵に名前を書く。 描いた絵の隅に、名前を書く習慣にします。書いた日付を大人が添えておけば、名前の字の変わり方も記録に残ります。
- 手紙やカードの差出人。 祖父母への手紙や年賀状に、名前だけをこどもが書きます。読む人がいる字は、こどもにとって特別だと思います。
どれも、練習というより、書く必要があるから書く場面です。私は、名前の練習はこういう場面で少しずつ積み重ねるのが自然だと考えています。
名前が書けたら
名前が書けるようになったら、次は家族の名前、友だちの名前、好きなものの名前へ広げていくのがよいと思います。名前の字を覚えたこどもは、ほかの言葉の中に同じ字を見つけるようになります。「これ、ぼくの名前の字だ」と気づく経験が、残りの字への入り口になります。
そのあとで、五十音表の残りの字を少しずつ埋めていきます。書き順で間違えやすい字はひらがなの書き順で間違えやすい字に、形の似た字は形が似ているひらがなの書き分けにまとめています。
かきカタで名前の字を練習する
かきカタは、ひらがなとカタカナの書き順を練習できる iPhone・iPad 向けのアプリです。字を選ぶと、お手本の線が書き順どおりに一画ずつ伸びていきます。指やペンで1画書いて離すと次の画のお手本が出ます。採点や正誤の判定はありません。
名前の字だけを練習するときは、五十音表から名前の最初の字をタップします。書き終えたら左上の×で表に戻り、次の字をタップします。たとえば「ゆうた」なら、「ゆ」「う」「た」の順に表から選びます。濁点のある字は、清音の字を開いてから、画面の上の切り替えボタンで濁音にします。「だいき」の「だ」なら、「た」を開いて「だ」に切り替えます。カタカナも同じボタンで選べます。
お手本の字の大きさは大・中・小の3段階で変えられるので、難しい字は「大」で形をつかみ、慣れたら小さくしていけます。十字の補助線を出すと、字のどこが真ん中かを確かめながら書けます。スピーカーのボタンを押すと、その字の読みが流れます。
収録しているのは、ひらがなとカタカナの清音・濁音・半濁音の142字です。拗音(きゃ など)や小さい「ょ」「っ」は入っていないので、名前にこれらの字があるときは、その部分を紙で練習してください。1,500円の買い切りで、広告やアプリ内課金はありません。iPhone では横向きで使います。
使い方はかきカタの始め方に書いています。
