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BrainDojoきっずを作った理由:手で書くことと、すごろくのこと

HiroHiro · Game Designer @ StudyXBrainDojo Kidsエッセイ
BrainDojoきっずを作った理由:手で書くことと、すごろくのこと

小さな子ども向けのアプリの多くは、「見るもの」として作られています。何かが動き、音が鳴り、キャラクターが喜び、子どもは一度タップして次の場面を呼び出す。集中は見事に続きますが、終わったあとに残るものはほとんどありません。BrainDojoきっずは、その逆に賭けたアプリです。3歳の子どもは、自分が手を動かしているからこそ続けられるのではないか。今日はその開発の背景をお話しします。

なぜ「手で書く」ことから始めたのか

このアプリの中心にあるのは、子どもが自分の手を動かして、画面に残る線をひくことです。

これは見た目の好みで選んだわけではありません。「なぞる → うつす → かく」の順番は、手書きそのものを調べた研究をふまえています。5歳児が手で書いた文字は、あとで見たときに読みに関わる脳の領域が働きましたが、なぞるだけ・キーボードで打つだけでは同じ反応は出ませんでした(James & Engelhardt, 2012)。3〜5歳の38人が3週間練習したところ、手書きのグループのほうが文字をよく見分けられました(Longcamp ほか, 2005)。大学生を対象とした脳波研究では、手書きのときのほうがキーボード入力より広い範囲の脳の領域が連携して働きました(Van der Weel & Van der Meer, 2024)。

いずれも本アプリを対象にした研究ではありませんし、そう主張するつもりもありません。これらから受け取ったのは方向性です。手で書く時間に価値があるのなら、アプリの仕事は「実際に書いている時間」を最大にして、それ以外を最小にすることだ、と。

なぜ、お手本が消えていくのか

なぞるだけで終わるアプリは、ルールのついた塗り絵に近いものです。おもしろいのは、お手本が消えたあとに何が起きるかです。

だからコースは4ステップで進みます。なぞる。お手本を横に見ながらうつす。何も見ないでかく。そして、覚えた文字を使ってためす。1段階ごとに支えがひとつ外れ、最後に子どもは「ひとりでできた」ところにたどり着きます。この瞬間こそが、このアプリで作りたかったものです。その前にあるものは全部、そこへ届くための道具です。

なぜ知育アプリに、すごろくが入っているのか

ここはよく驚かれるので、きちんと説明させてください。

ひとりで練習している子どもは、価値のあることをしています。けれどそれは、子どもがひとり、画面がひとつ、という絵でもあります。それだけを出すのは、どうしても嫌でした。そこでアプリのもう半分を、2〜4人で1台を囲むすごろくにしました。サイコロを振り、スターとコインを集め、マスに止まると、いきなり全員で同じ問題に取り組むことになったり、画面の両端で向かい合って対戦することになったりします。

端末が、人を引き離すものではなく、みんなが囲むものに変わります。コードは同じアプリの中にありますが、家の中に置かれる「もの」としては別物です。しかもすごろくのミニゲームは、ひとりで遊ぶときと同じ、かずかぞえ・記憶・くらべっこの活動です。家族のゲームが、そのまま練習にもなっています。

なぜ、おすすめは3つだけなのか

すべてのコースとゲームを一度に見せることもできました。あえてそうしていません。「きょうのトレーニング」のおすすめは3つで、そこでその日の提案は終わりです。

3つなら、夕食前にも、待ち時間にも収まります。そしてなにより、「まだやりたい」と思っているうちに終わります。その状態で終えてほしいのです。遊んだ日はスタンプカレンダーに残るので、積み上がっていくのは「長い1日」ではなく「短い日の連なり」になります。

なぜ、子どもの字がフォントになるのか

このアプリの中でいちばん愛着があるのは、じぶんフォントです。五十音表をお子さまの字で埋めると、アプリ全体の文字が、その子の手書きに変わります。メニューも、ボタンの文字も、全部が4歳のゆれた線になります。

保存するたびに、日付と、そのとき何歳だったかが一緒に残ります。だから2年もすると、これはフォントではなく記録になります。4歳のときはこう書いていて、6歳の同じ表はこうなった、と。「この字は自分のものだ」ということを子どもに伝える方法として、これ以上のものを私たちはまだ見つけていません。

なぜ、広告もアカウント登録もないのか

このアプリは、子どもの手に渡ります。その事実だけで、設計の議論はかなり片付きます。

広告は一切ありません。アカウントの作成も、メールアドレスの登録も、子どもとやりたいことのあいだに立ちはだかるログイン画面もありません。保護者向け設定はペアレンタルゲートの内側にあり、設定した1日の上限をこえるとアプリはロックされます。「きょうはもうおしまい」という気の重い役目を、アプリが引き受けます。

どれも、うまくできていると誰にも気づかれない、地味な判断です。同時に、保護者がタブレットを置いて隣の部屋に行ける理由でもあります。

小さなアプリを、丁寧に

BrainDojoきっずは、医療的・科学的な能力改善を保証するものではありません。あくまで知育ゲームです。目指しているのは、子どもが手で書く時間を「自分から続けたくなるもの」にすること。そして、家族が同じ画面のまわりに集まる理由を作ることです。

実際の使い方はBrainDojoきっずの始め方で、毎日のコツは使い方のヒントで、想定している使い手はどんな人のためのアプリ?でご紹介しています。関連記事はBrainDojo Kids タグからどうぞ。

この考え方に共感していただけたら、ぜひ一度お試しください。

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