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記憶力を鍛える方法:大人が毎日の生活でできる練習

OBARA HirokiOBARA Hiroki · DeveloperBrainDojo使い方
記憶力を鍛える方法:大人が毎日の生活でできる練習

1885年、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、意味のない音節の並びを自分で覚え、時間がたつとどれだけ忘れるかを測った研究を発表しました。覚えた直後に急に忘れ、その後は忘れ方がゆるやかになる。この結果は「忘却曲線」として知られています。

忘れることは、記憶のふつうの働きです。それでも、最近覚えられない、名前が出てこない、と感じることは誰にでもあると思います。この記事では、記憶について研究で比較的はっきりしていることをもとに、大人が毎日の生活の中でできる練習を書きます。

最初にお断りしておくと、ここに書くのは、覚えたいことを覚えやすくするための方法です。物忘れが増えて仕事や生活に支障が出ている、まわりの人から指摘される、といった場合は、練習を工夫するより先に医療機関に相談してください。

「覚える」より「思い出す」を練習する

記憶の研究で、最もよく確かめられている結果のひとつが「テスト効果」です。覚えたことを思い出そうとすること自体が、記憶を強くする、というものです。

よく引かれるのは、2006年の Roediger と Karpicke の論文です。大学生に短い文章を覚えてもらい、何度も読み直すグループと、読んだあとに思い出して書き出すグループを比べました。5分後のテストでは読み直したグループのほうが成績がよかったのですが、2日後と1週間後のテストでは、思い出して書き出したグループのほうがよく覚えていました。

読み直すと、内容に見覚えがあるので、覚えたような気がします。けれども、その「見覚えがある」感じは、あとで何も見ずに思い出せることとは別のものです。私は、この研究のいちばん大事な点はここだと思います。

学習法をまとめた2013年の Dunlosky らの総説も、10の学習法を比べて、思い出す練習(practice testing)と、次に書く間をあけた練習の2つを「有用性が高い」と評価しています。反対に、読み直しや蛍光ペンで線を引くことは「有用性が低い」とされました。

毎日の生活に取り入れるなら、次のような形があると思います。

  • 本や記事を読んだら、閉じてから要点を3つ書き出す。書き出してから本を開いて確かめる
  • 会議や打ち合わせのあと、帰り道に決まったことを頭の中で並べてみる
  • 初めて会った人の名前を、別れたあとに一度思い出す
  • 買い物のメモを見る前に、何を買うのかを思い出してみる

どれも、見る前に思い出す、という順番がポイントです。思い出せなかったところが分かれば、そこを確かめればよいので、失敗しても損はありません。

間をあけて繰り返す

もうひとつ、よく確かめられているのが「分散学習」です。同じ時間をかけるなら、一度にまとめて繰り返すより、間をあけて何回かに分けたほうが、長く覚えていられます。

2006年の Cepeda らのメタ分析は、この効果を調べた数多くの研究をまとめ、間をあけた練習のほうが、まとめた練習より記憶に残ることを確かめています。

エビングハウスの忘却曲線とあわせて考えると、覚えた直後に何度も繰り返すより、少し忘れかけたころにもう一度思い出すほうがよい、ということになると思います。たとえば覚えたい内容があれば、翌日、数日後、1週間後に、何も見ずに思い出してみる。前の節の「思い出す練習」と組み合わせると、どちらの効果も使えます。

意味をつける、場所に置く

覚えたいことに意味やつながりをつけると、覚えやすくなります。人の名前なら、その人と会った場所や話した内容と一緒に思い出す。数字なら、知っている年号や日付に結びつける。ばらばらの情報を、すでに知っていることに結びつけるのが基本だと思います。

古くから知られている方法に「場所法(記憶の宮殿)」があります。よく知っている家や通勤路を思い浮かべ、覚えたいものを順番にその場所に置いていく方法です。思い出すときは、その道を頭の中で歩きます。順番のあるものを覚えるのに向いていて、記憶の競技をする人たちも使っています。

ただ、場所法は覚えたいものを覚えるための技術で、記憶力そのものを全体に高めるものではない、と私は理解しています。

睡眠と運動

記憶は、覚えるときだけで決まるわけではありません。

睡眠については、2013年の Rasch と Born の総説が、睡眠が記憶の定着に関わることを示す研究を整理しています。覚えたあとに眠ることで、記憶が安定すると考えられています。夜ふかしをして覚えるより、覚えてから眠るほうが理にかなっていると思います。

運動については、2011年の Erickson らの研究がよく知られています。高齢者120人を、1年間ウォーキングなどの有酸素運動をするグループと、ストレッチをするグループに分けたところ、有酸素運動のグループでは、記憶に関わる海馬という部分の体積が増えていました。対象は高齢者で、若い大人にそのまま当てはまるかは分かりませんが、体を動かすことが脳にとって意味のあることを示す結果のひとつです。

脳トレについて

記憶の課題をアプリで練習するという方法もあります。私が作っている BrainDojo もそのひとつです。

ただし、脳トレに効果はあるのかにも書いたとおり、練習した課題はうまくなっても、その伸びがほかの課題や日常生活に広がるかについては、はっきりした根拠がありません。記憶の課題を毎日続ければ、その課題の点数は上がるはずですが、それで名前を忘れなくなるとは言えません。

覚えたいことがあるなら、その内容そのものを思い出す練習をするのが近道だと私は考えています。脳トレは、それとは別に、毎日少しのあいだ集中する時間として使うのがよいと思います。

BrainDojo について

BrainDojo は、短いミニゲームで毎日の脳トレを続けるための iPhone・iPad 向けのアプリです。アプリの中にも「本アプリは医療機器ではありません」と表示しています。記憶力を高める、物忘れを防ぐ、とは言いません。

トレーニングは「計算力向上」「記憶力向上」「注意力向上」「手書きトレーニング」などのレーンに分かれていて、「記憶力向上」には、Nバックや、位置を覚えて答える課題などがあります。指での手書き、音声での音読、タップで答えます。1日1回の「脳実力チェック」は、処理速度、抑制力、短期記憶の3つの軸から1種目ずつ出題される短いテストです。続けると点数は上がっていくはずですが、その多くは課題に慣れた効果だと私は考えています。

無料プランでは、日替わりの「おためし」が1日2本と、「脳実力チェック」、トレーニングした日にハンコを押すカレンダーが使えます。BrainDojo Plus では「今日のトレーニング」とすべてのトレーニングが使えます。どちらも広告はありません。

最初の使い方はBrainDojoの始め方で、2つのプランの違いはBrainDojo FreeとPlusの違いでご紹介しています。

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