漢字テストの前日にする練習:覚えたつもりを減らす順番

漢字の練習は、一度にまとめるより、日をあけて分けたほうが長く覚えていられます。このことは記憶の研究で繰り返し確かめられています(Cepeda らによる2006年のまとめ)。理想を言えば、テストの前日に慌てなくてすむように、週の初めから少しずつ練習しておくのがいちばんです。
それでも、気がつけばテストは明日、という夜はあると思います。この記事では、そういう夜にできる練習を、順番に沿って整理します。長期的な覚え方については小学生の漢字の覚え方:書いて覚えるときの手順に書いたので、ここでは前日に絞ります。
前日にいちばん避けたいのは「覚えたつもり」
前日の練習でよくあるのは、テスト範囲の字を、お手本を見ながら1字10回ずつ書く、というやり方です。手は動きますし、ノートも埋まります。ただ、お手本を見ながら書いている間は、字を「思い出す」練習にはなっていません。
お手本を見れば分かる字と、何もない状態で書ける字は、別のものです。見慣れた字ほど「もう覚えた」と感じますが、テストでお手本は出てきません。前日の夜に減らしたいのは、この「見れば分かるけれど、何もなしでは書けない」字だと私は考えています。
記憶の研究では、思い出す練習そのものが記憶を強くすることが知られています。「テスト効果」と呼ばれるもので、Roediger と Karpicke の2006年の研究では、読み直すより思い出して書き出す練習をしたほうが、あとのテストの成績がよくなりました。漢字の書き取りで行われた実験ではありませんが、前日の練習の組み立てにもそのまま使える考え方だと思います。
前日の夜の順番
1. まず、テストの形で書いてみる
最初にやるのは練習ではなく、テストです。テスト範囲の字を、読みや例文だけを見て、お手本なしで書きます。大人が読み上げてもよいですし、プリントの答えの部分を隠してもかまいません。
書き終えたら答え合わせをして、字を三つに分けます。すぐ書けた字、書けなかった字、迷ったり途中で止まったりした字です。迷った字は、書けなかった字のほうに入れておくのが安全です。
この最初のテストで、その夜に練習する字が決まります。すぐ書けた字は、今夜はもう練習しなくてかまいません。
2. 書けなかった字だけを練習する
書けなかった字と迷った字だけを、次の流れで練習します。
- お手本を見て、書き順を確かめながら2〜3回ていねいに書く。
- お手本を隠して、読みだけを見て1回書く。
- 書けなければ、お手本で確かめて、もう一度隠して書く。
形がつかみにくい字は、部品に分けて見ると覚えやすくなります。「晴」なら「日」と「青」というように、知っている部品の組み合わせとして見る方法です。書き順を確かめたいときは、このサイトの小学校で習う漢字の書き順で、1年生から6年生までの字を一画ずつ見られます。
3. 読みと送りがなも確かめる
小テストには、漢字を書く問題だけでなく、読みを書く問題や、送りがなをつけて書く問題が入ることもあります。書けるのに読みを間違える、字は合っているのに送りがなが違う、ということはよくあります。テスト範囲の例文を声に出して読み、送りがなのある言葉は送りがなまで書いてみると安心です。
4. 時間をおいて、もう一度テストする
練習が終わったら、少し時間をあけます。お風呂や夕食のあと、寝る前など、間に別のことを挟むのがよいと思います。そのあと、書けなかった字だけを、もう一度お手本なしで書きます。
練習の直後に書けるのは、ある意味で当然です。時間をおいてから書けるかどうかで、本当に覚えたかが分かります。ここでまた書けない字があれば、その字だけ1の流れをもう一度やります。
5. 寝る
前日の夜にいちばん削ってはいけないのは、睡眠の時間だと私は考えています。眠っている間に、その日に覚えたことが記憶として定着しやすくなることが、多くの研究で示されています(Diekelmann と Born による2010年のまとめ)。夜遅くまで書き続けるより、決めた量で切り上げて寝るほうが、翌日のテストにはよいと思います。
6. 翌朝、書けなかった字だけ1回
朝に時間があれば、前の夜に最後まで怪しかった字だけを、お手本なしで1回ずつ書きます。数分で終わる量です。ここで新しい字を増やす必要はありません。
量の目安
前日の練習は、私の考えとしては、全部で20〜30分ほどまでにとどめるのがよいと思います。最初のテストで書けなかった字が多いときほど、全部を完璧にしようとせず、出やすい字、何度も間違える字から優先します。
その夜に全部を覚えきれないこともあると思います。そのときは、書けなかった字に印をつけておき、テストのあとにもう一度練習すれば十分です。前の学年の字ほどあとで困ることが多いので、テストで落とした字は、そこで終わりにしないことのほうが大事です。
答え合わせは、骨組みを先に
こどもの字を採点していると、とめ・はね・はらいが気になることがあると思います。文化審議会国語分科会の「常用漢字表の字体・字形に関する指針」は、手書きの字の形には幅があり、字の骨組みが合っていれば、細部の違いで誤りとすべきではないという考え方を示しています。
前日の夜は、まず線の数、交わるか離れるか、長いか短いか、という骨組みが合っているかを確かめるのがよいと思います。細部は学校の先生の基準もあるので、気になるところは教科書の字と見比べる程度でよいと考えています。
カンジンで前日のテストをする
カンジンは、手書きで答える iPhone・iPad 向けの漢字アプリです。答えはタップではなく、画面に指やペンで書き、手書きの文字はアプリが認識します。この記事の「お手本なしで書いてみる」と「答え合わせ」を、こども一人でも進められます。
前日の確認に向いているのは「書きテスト」と「読みテスト」です。書きテストでは、読みに合う漢字をまとめて書き、「採点する」で答え合わせをします。読みテストでは、漢字が読めるかをまとめて確かめます。
テスト範囲の字に合わせたいときは「マイデータ」を使います。フォルダを作り、「例文」「答えの漢字」「読み(ひらがな)」を入れて、自分の問題を作ります。ドリル設定でそのフォルダを選び、レベルを「なし」にすると、マイデータの問題だけが出題されます。出題数は10問から100問まで、10問刻みで選べます。週の初めに範囲の問題を入れておけば、日をあけた練習にも、前日の確認にも同じ問題を使えます。
書きテスト・読みテストとマイデータを選んでの練習は、1,500円の買い切り「すべてアンロック」で使えるようになります。無料で使えるのは「今日のドリル」「今日のチャレンジ」と、10問で今の漢字のレベルの目安を出す「実力チェック」です。広告やサブスクリプションはありません。手書き認識のモデルを最初にダウンロードするので、はじめて使うときだけインターネット接続が必要です。前日の夜に初めて使う場合は、この準備の時間も見込んでおいてください。
字の形を整えるのは紙のノート、思い出して書く確認と答え合わせはアプリ、という分け方が、前日の夜にも合っていると思います。
最初の使い方はカンジンの始め方で、ほかの練習方法との違いはカンジンと他の漢字練習の比較でご紹介しています。
