ピアノ教室に通う前に家でできること

オーストラリアの音楽教育学者 Gary McPherson さんらは、7、8歳で学校の楽器の授業を始めた157人のこどもを、習い始める前から追いかけました。その結果をまとめた章(McPherson、Davidson、Evans「Playing an Instrument」、『The Child as Musician』第2版所収)によると、途中でやめたこどもの多くは、始める前に、自分がどれだけ練習するかを現実より多く見積もっていました。
習い始める前のこどもは、練習がどういうものかをまだ知りません。これは当たり前のことです。ただ、教室に通う前の数か月に家でできることは、意外に多いと私は考えています。この記事では、ピアノ教室に通う前に家でできることを、楽器がない家の場合も含めてまとめます。
歌うこと
いちばん手軽で、いちばん大事だと私が思うのは、一緒に歌うことです。童謡でも、保育園や幼稚園で覚えてきた歌でもかまいません。
歌える曲は、弾きたい曲になります。メロディが頭に入っている曲なら、こどもは鍵盤の上で音を探しはじめます。教室で最初に弾く曲も、たいていは短い童謡です。知っている曲が多いほど、最初のレッスンで「知ってる」と言える場面が増えます。
リズムで遊ぶ
手をたたく、歩く、止まる。音楽に合わせて体を動かす遊びも、家でできます。
日本の幼児教室でよく聞く「リトミック」は、スイスの音楽家エミール・ジャック=ダルクローズ(1865〜1950)が始めた教育法がもとになっています。米国のダルクローズ協会の説明によると、拍、リズム、拍子、フレーズといった音楽の要素を、楽譜を読むことや聴くことだけでなく、体の動きで学ぶ方法です。
家なら、歌いながら拍に合わせて手をたたく、速い曲と遅い曲で歩く速さを変える、音楽が止まったら止まる、くらいで十分だと思います。
鍵盤に触れる
家に鍵盤があるなら、自由に鳴らさせてあげてください。右に行くほど高い音、左に行くほど低い音。強く押すと大きい音、そっと押すと小さい音。こうしたことは、教わるより先に、触っているうちに気づくことが多いと思います。
もう一つ、黒鍵が2つと3つのまとまりで並んでいることに気づけると、教室での最初の説明がすっと入ります。これは鍵盤のドの見つけ方にくわしく書きました。
指を1から5の番号で呼ぶ遊びも、家でできます。親指が1、小指が5です。ピアノの指番号とはに教え方をまとめています。
先生の邪魔にならないか
家で先に弾かせると、変な癖がつくのではないか。そう心配する保護者は多いと思います。
私は、自由に音を鳴らすことは心配しなくてよいと考えています。気をつけたいのは、手の形や指づかいを、家で教え込みすぎることです。ここは教室に任せたほうがよいと思います。先生によって最初の教え方は違いますし、こどもに二つの違う説明が届くと混乱します。
最初のレッスンで「家ではこんなふうに遊んでいました」と先生に伝えておけば、先生もそれに合わせてくれるはずです。
練習の話をしておく
冒頭の研究に戻ります。こどもは始める前には練習の大変さを知りようがありません。だから、通う前に、少しだけ話しておくとよいと私は思います。
「教室は週に1回、おうちでも少し弾くんだよ」くらいの話で十分です。毎日何分、と約束させる必要はないと思います。始めてから、実際の様子に合わせて決め直せばよいことです。練習を嫌がるようになったときのことはこどもがピアノの練習を嫌がるときにに書きました。
楽器がない家では
楽器がなくても、歌うこととリズム遊びはできます。
鍵盤の並びを知るなら、紙に鍵盤を印刷した「紙鍵盤」も昔から使われています。音は出ませんが、黒鍵の2つと3つの並びを見たり、指番号で指を置いてみたりするには十分です。
タブレットのピアノアプリも一つの方法です。音が出るので、紙鍵盤より遊びになりやすいと思います。教室に通い始めたあと、楽器を買うかどうかを考える間のつなぎにもなります。
体験レッスンで見ておきたいこと
多くの教室には体験レッスンがあります。私は、次のようなところを見ておくとよいと考えています。
- こどもへの話し方。 先生がこどもの目の高さで、こどもに分かる言葉で話しているか。
- こどもの表情。 帰り道に、こどもが何を話すか。楽しかったかどうかは、こどもの話し方で分かることが多いです。
- 家での練習についての考え。 毎日どれくらい弾いてほしいか、家に楽器がない場合はどうするか。先に聞いておくと、あとで困りません。
- 通いやすさ。 家からの距離や曜日。長く通うことになるので、無理のない場所がよいと思います。
始める年齢についてはピアノは何歳から始めるかに書きました。
キンダーピアノを教室の前に
キンダーピアノは、3歳ごろから小学校低学年までのこども向けの、iPhone と iPad で使うピアノアプリです。4歳の娘のために作りました。
教室の前に使うなら、まず「じゆうに ひく」で自由に鳴らすところから始めるのがよいと思います。鍵盤は「かんたん」と「ふつう」から選べて、「かんたん」は真ん中のドから1オクターブ上のミまでの、大きな鍵盤です。押した音を記録して、あとで鳴らす「ろくおん」もあります。
どうよう21曲はすべて無料です。練習の画面では、次に弾く音符がハイライトされ、指番号が出て、押す鍵盤が光ります。「ゆっくり」モードは正しい鍵盤を押すまで待ってくれます。ト音記号とヘ音記号の楽譜をそのまま使っているので、教室で楽譜を見たときに、見覚えがある状態になります。楽譜の読み方はこどもの楽譜の読み方にまとめました。
アプリは教室の代わりにはなりません。先生は、こどもの手を見て、音を聴いて、その場で直してくれます。私は、教室の前と、教室の合間に使うものだと考えています。
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